ファインマン物理学 第5巻 量子力学

目次

訳者の序
ファインマン
前書き

第1章 量子的な性質

1-1 原子の力学
1-2 弾丸をつかった実験
1-3 波をつかった実験
1-4 電子をつかった実験
1-5 電子の干渉
1-6 電子を監視する
1-7 量子力学の第一原理
1-8 不確定性原理

第2章 波動的観点と粒子的観点との関係

2-1 確率波の振幅
2-2 位置と運動量の測定
2-3 結晶による回折
2-4 原子の大きさ
2-5 エネルギー準位
2-6 哲学的意味

第3章 確率振幅

3-1 振幅の結合則
3-2 2個のスリットによる干渉模様
3-3 結晶による散乱
3-4 同種粒子

第4章 同種粒子

4-1 ボース粒子とフェルミ粒子
4-2 2個のボース粒子の状態
4-3 n個のボース粒子の状態
4-4 光子の放出と吸収
4-5 黒体によるスペクトル
4-6 液体ヘリウム
4-7 排他律

第5章 スピンⅠ

5-1 シュテルンーゲルラッハの装置による原子の分離
5-2 ろ過された原子を用いた実験
5-3 一連のシュテルンーゲルラッハのフィルター
5-4 基本状態
5-5 振幅の干渉
5-6 量子力学のからくり
5-7 別の基本状態への変換
5-8 その他の場合

第6章 スピン 1/2

6-1 振幅の変換
6-2 回転した座標系への変換
6-3 Z軸のまわりの回転
6-4 Y軸のまわりの180度及び90度の回転
6-5 X軸のまわりの回転
6-6 任意の回転

第7章 振幅の時間依存性

7-1 静止している原子;定常状態
7-2 一様な運動
7-3 位置のエネルギー;エネルギーの保存
7-4 力;古典的極限
7-5 スピン1/2の粒子の際差運動

第8章 ハミルトニアン行列

8-1 振幅とベクトル
8-2 状態ベクトルの分解
8-3 現実の世界の基本状態とはどんなものか
8-4 状態は時間とともにどのように変わるか
8-5 ハミルトニアン行列
8-6 アンモニア分子

第9章 アンモニア・メーザー

9-1 アンモニア分子の状態
9-2 静電場内のアンモニア分子
9-3 時間に依存する場のなかでの転移
9-4 共鳴点における転移
9-5 共鳴点からはずれているときの転移
9-6 光の吸収

第10章 他の2状態系

10-1 水素分子イオン
10-2 核力
10-3 水素分子
10-4 ベンゼン分子
10-5 染料
10-6 磁場内におけるスピン1/2の粒子のハミルトニアン
10-7 磁場の中で自転する電子

第11章 さらに2状態系について

11-1 パウリのスピン行列
11-2 演算子としてのスピン行列
11-3 2状態方程式の解
11-4 光子の偏りの状態
11-5 中性K中間子
11-6 N状態系への一般化

第12章 水素原子の超微細構造

12-1 2個のスピン1/2の粒子からなる体系の基本状態
12-2 水素原子の基底状態に対するハミルトニアン
12-3 エネルギー順位
12-4 ゼーマン効果
12-5 磁場の中での状態
12-6 スピン1の場合の射影行列

第13章 結晶格子内における伝播

13-1 1次元格子内における電子の状態
13-2 決まったエネルギーの状態
13-3 時間に依存している状態
13-4 3次元格子内の電子
13-5 格子内における他の状態
13-6 格子のなかの不完全さによる散乱
13-7 格子欠陥による捕獲
13-8 散乱振幅と束縛状態

第14章 半導体

14-1 半導体内の電子とホール
14-2 不純物半導体
14-3 ホール効果
14-4 半導体の接合
14-5 半導体接合の整流作用
14-6 トランジスタ

第15章 独立粒子近似

15-1 スピン波
15-2 2個のスピン波
15-3 独立の粒子
15-4 ベンゼン分子
15-5 さらに有機化学について
15-6 独立粒子近似の他の場合への応用

第16章 振幅の位置依存性

16-1 線上の振幅
16-2 波動関数
16-3 一定の運動量をもつ状態
16-4 Xの状態の規格化
16-5 シュレディンガーの方程式
16-6 量子化されたエネルギー準位

第17章 対称性と保存則

17-1 対称性
17-2 対称性と保存則
17-3 保存則
17-4 偏った光
17-5 Λ粒子の崩壊
17-6 回転の行列のまとめ

第18章 角の運動量

18-1 電気双極子放射
18-2 光の散乱
18-3 ポジトロニウムの消滅
18-4 任意のスピンに対する回転の行列
18-5 核のスピンの測定
18-6 角運動量の測定

補遺1 回転の行列の導出
補遺2 光子の放出の際のパリティーの保存

第19章 水素原子の周期律表

19-1 水素原子に対するシュレーディンガーの方程式
19-2 球対称な解
19-3 角依存性をもつ状態
19-4 水素原子の一般の解
19-5 水素原子の波動関数
19-6 周期律表

第20章 演算子

20-1 操作と演算子
20-2 平均エネルギー
20-3 原子の平均エネルギー
20-4 位置の演算子
20-5 運動量の演算子
20-6 角運動量
20-7 平均値の時間的変化

第21章 古典的状況のもとでのシュレーディンガーの方程式
    超伝導のゼミナール

21-1 磁場内におけるシュレーディンガーの方程式
21-2 確率の連続の方程式
21-3 2種類の運動量
21-4 波動関数の意味
21-5 超伝導
21-6 マイスナー効果
21-7 磁束の量子化
21-8 超伝導の力学
21-9 ジョセフソン接合

ファインマン結びの言葉
演習
演習解答
索引


ファインマン物理学〈5〉量子力学

ファインマン物理学〈5〉量子力学

高校数学 数?A 数?B 数?C

大学レベル 微分積分 の勉強
      微分方程式の作り方の勉強
      複素数の勉強 少々

こんなところも、寄り道しながら、とうとう最後まで読みました。
ファインマン物理学。

第2巻から第5巻までは一気に読んだって感じです。

かの源氏物語の訳本を作成した谷崎潤一郎は、書いたそうです。

「意味がわからなくてもいい。響きが美しければいい」

ファインマンを読み進めるにあたって、私が常に念頭に置いたのは
谷崎氏のこの言葉でした。

ファインマン物理学に置き換えると、

「数式展開の意味がわからなくていい。導入されている物理学の概念がさっぱり
ワケワカメでもかまわない。講義のノリがかっこよかったらいい」

ファインマンさんは、とても優秀で、愛にあふれた「先生」だと思いました。

講義回数を重ねるにつれて、
「ここを復習するには、第〇巻 第〇章 〇節に戻って!」
という注釈が、随所に出てくるようになります。
私は、とにかく「読了」までもっていくのが、最優先だと思ったので、
これはあえて飛ばして、ワケワケメでもとにかく読むということを、
優先しました。そして、とうとうゴール。

密度があまりにも濃い本だと思ったので、どうやって書評を書いたら
いいのかわかりまへん。

ほんと。何をかいたらいいのかわからない。

原点に立ち返るつもりで、なんで、ファンマン山登りを思いついたのかと
いうと。

理由1 
仕事が、停滞していた。→ヒマだったのです。

理由2
仕事柄、算数と理科の成績が低迷して苦しむ生徒さんを多く見てきた。

驚異的に数学や理科が出来たヒトって、どんなヒトなのかしらって、疑問に
思った。

理由3
小学校・中学校・高校で数学を勉強している生徒さんは、
「数学なんて、現実には役に立たない」
とよく言います。

先生としては、
「そんなことは、断じてありません。数学や理科が現実に役にたっていない
ように思うのは、ただの錯覚です。もしも実社会にでて、数学や理科が
なんのやくにも経っていないと思うのなら、それは、あなたが数学や理科の
素養がないために、その能力が必要とされない、未来のあまりない領域に、
人生コースが設定されてしまっているからです。」

といえるようになりたかった。

理由4
少なくとも、日本においては、数学と理科の成績がいい人間の進学先の
王道は、医学部です。
だって、お金になるし。ステータス高いし。
ところが、ごくたまに、医学部に入って、お医者さんになることが出来るのに、
その道をかなぐり捨てて、学問の世界に進む変人が現れる。
そして、そんな変人が、選ぶのが、数学や物理学であるということが
心強く引かれた。
そういう変人が、つくってきた物理学や数学というものが、どんなものか
知りたかった。

理由5

理由3と重なってくるけど、ファインマン物理学をクリアに理解するためには、
学校で勉強する内容は、本当に必須なのだということを、自分でも
実感したかった。

この効果はあったと思う。ファインマンを読み進める中で、
数学や理科と教育の現場で向き合う心構えがいい方向で変わったように思う。


読後の感想としては。

「大学で学ぶ数学。つまり東京大学理学部数学科や、MITのMathmaticsで
学習できるようなことをしっかり勉強しないと、ファインマン物理学を
クリアに理解するのは、難しい。」

ということかな。

とてつもなく、初歩的な話。

「電池 回路 豆電球 スイッチ 電流・電圧計測器」
のセットがあるとする。

色々な条件で、電圧・電流の値を測って、グラフをプロットする。

できあがったプロットを、なんとなく通る「直線」をひく。

その直線の式を「オームの法則」って形で、勉強する。

流れとしては、

実験をやる。(ファインマン物理学になると、これが、ゴツイ)

データをとる。(ファインマン物理学になると、データ量もゴツイ)

出来上がるグラフを、うまいこと表現する「関数」を書く。
(その関数を見つけるための手法がゴツイ。つまり微分方程式というツール
使って、実験でとってきたデータをうまく説明する関数を、見つけるプロセスが
泣きそうにややこしい。)

関数がわかっちゃう。
もしくは、その関数を見つけてしまうための微分方程式の形がわかってしまえば、

「実際に、試していないことを、数式(関数)に値を入れるだけで、予測が
できるようになる。つまり現実の実験をこれ以上やらなくてもシミュレーションが
できるようになる。」

ここまできた時に、
「ある程度、自然現象がわかったといえる。だからその自然現象を、テクノロジーとして、利用できないかという問題意識が起こってくる」

私は、ビジネスの法律を勉強していた文系人間ですので、ここから
私の問題意識と重なってきます。

「実験を重ねる中で、新しく発見する関数や、モデルを、現実の商品開発
に応用する。」

ここから、本当に、利幅が大きな「ビジネス」が生まれると思うのです。

そして、入手したデータが、とてつもなく解読が困難だったり、
関数を発見するのも大変だし、関数を理解するのも大変だったりすると。

それは、「知的財産」として、強力だということになります。

ここに、強烈な「差別化」「独占」という要素を備えたビジネスが可能に
なってくると思うのです。

量子力学は、「自然科学でビジネスをする」という宝探しをするための、
最強の羅針盤なのではないかと思いました。