今日から使える物理数学 (今日から使えるシリーズ)

今日から使える物理数学 (今日から使えるシリーズ)

筆者プロフィール
http://www.fukui-ut.ac.jp/view.rbz?cd=471

生まれは岡山県の南の邑久郡(現在は瀬戸内市となっている)で、大学は大阪大学、そして、工学部を卒業後直ちに日立製作所中央研究所で社会生活を始めた。最初は理化学機器(X線付き電子顕微鏡)の開発研究を行ったが、その内にX線半導体結晶を調べる(評価する)様になった。この間に論文を度々外部に発表して、学部卒業後丁度十年で東京大学から工学博士(論文博士)をもらった。その後もしばらくは研究所にいたが、そのころ設立された超エルエスアイ共同研究所に出向いて、他社の研究者と一緒にLSI半導体)の研究をした。この関係もあって、日立製作所に戻ったあとしばらくLSI半導体)の製造工場(武蔵工場)で働いた。その後、1987年に姫路工業大学の電子工学科に教授として赴任した。これを機に住居を神戸に移した。姫路で16年間働いた。この間、半導体デバイス、量子力学超伝導、物理数学などの教科書をオーム社丸善裳華房講談社などから出版した。そして、2004年にこの福井工業大学電気電子工学科に赴任してきて、現在は3年目である。

再来「ゲームプログラミングの数学」 - book-loverの日記

波動方程式の式変形で、どうもしっくりと納得がいかない。
ある式を、なんらかの文字について解く。
その結果を別の式の同じ文字に代入する。
代入した計算を、実はさらに、ある文字について解いている。
作業工程というものを、マニュアルにするとただそれだけの話なのですが、
こういったちょっとしたところを、理工系の本を書く人はわりかし、簡単にはしょる。
それと、数ページ前につかった式を、いきなり、(??ページの式より)という記法で
ごまかす。
今回も、何度か、そういう箇所にはまりそうになり、そのたびに、ストレスを抱えることになる。
こういうことがないように、入念なチェックをするのが、「編集」「校正」の仕事ではないのだろうかと
思う。
もし、僕が出版社に勤務することになったら、そんなことをやりたいような、やりたくないような。
間違いなく、筆者に嫌われることになりそうだな。
とそんなことを考えていて、念頭にあった会社が「講談社」だったのですが、こんな記事がHotentryに入っておりました。

本書の序文より

本書の刊行は、講談社サイエンティフィーク出版部の慶山篤氏の熱血と涙ぐましい努力とによるところが
大である。氏は編集協力が、秀でているばかりでなく、物理数学にも造詣が深く、「われ一言を言えば、
かれ十を知る」といった具合で、本書はあれよあれよという間に編集されていった。刊行にあたって、
慶山氏のご尽力に敬意を表するとともに、ご援助に心から感謝する次第である。

こういうことを、文末にいれるのは、岸野先生という人のキャラクターなのかな。
先生のキャラみたいなものが、本のなかの、色々なところで、感じることがあった。

おそらく、この「今日から使えるシリーズ」では、慶山さん(会ったことないですが。)のような
人がいて、1冊1冊丁寧なチェックが入っているのでしょうね。
もっとも、他の物理本が、こんなに丁寧には作られていないだろうから、最初にこのシリーズばかりで
勉強してしまうと、他の本がしんどくてタッチできないという「弊害」があるかもわかりませんけど。

で、物理数学のジャンルに詳しい人によるチェックというものが効いているかどうかというのは、

「読者」が判断するわけです。
「読者」の立場で、言わせてもらうと、ほとんと「合格」なのではないかと思います。
よくぞ、このページ数で、ここまでコンパクトにまとめたと思います。

しかも、だからといって、定理・公式の証明過程、例題での使い方の説明のところで手抜きのような
ものは、かなりあら捜しをしても、なかなかスキとしてみつからない。
「あー、そうだったのか」とひざをつくところがたくさんありました。
この本はよくできていると思います。

今日から使える微分方程式 - book-loverの日記

複素解析のイントロダクション - book-loverの日記

フーリエ変換の学習について - book-loverの日記

物理計算を理解する上での、数学者の役割について - book-loverの日記

微分方程式」「ベクトル解析」「複素関数」「フーリエ変換

それぞれが、「ジャンル」になっていて、「本1冊」の分量になっているところ、
「ダイジェスト」として「物理数学」というタイトルでこの本は成立している。

すでに、この時点で、「大丈夫かいな?」という「不安」がよぎるのですが、なんとなく
買ってしまいました。
その理由としては、「今日から使えるフーリエ変換」を書いた筆者が、「詳しいところは、岸野先生に・・」
と書いてあったから。
この「フーリエ変換」本がよくできていたと思ったので、その人が進める本は信頼が
できると思いました。
その「予想」は、裏切られることなく、「アタリ」を引けたのではないかなと個人的には思っています。

第1章 微分方程式を解く
空飛ぶスカイダイビングの秘密

知っておくと便利な基礎事項

変数分離はキホンのキ

1階線形微分方程式に挑戦

2階線形微分方程式に挑戦

減衰振動を解く極意

一休さんの驚きの知恵 強制振動
(このブログの筆者注 実はここのところ、「ファインマン物理学」を読んでも式展開がよく
わからなかったところです。でもこの人の説明では、「最期までイケタ!」と思えました。)

第2章 3次元を手中に収める快感

あの山のもっとも険しい場所は?

3次元ベクトルは便利な道具である。

ベクトル解析三種の神器 Grad Div Rot
(ここが厳しい。森毅先生の本を読んでも、イメージと数式が結びつかなかった。)

ガウスの定理を徹底追及

ストークスの定理で免許は皆伝

第3章 虚数は好奇の世界への入り口
さすがに、この章は「今日から使えるシリーズ」に道をゆずってもよかったのではないかと思った。
いくらなんでも、圧縮しすぎかなと。しかも、ハイゼンベルクまで登場してしまっているから。
まあ、イントロダクションとしてはいいのかな。

おとぎ話から虚数の世界へ

複素数複素平面って何だ?

幕間劇 ハイゼンベルク登場

幕間劇 虚数が実態とはいかに?

複素数から複素関数

複素積分へのいざない

級数展開の落とし語 これが留数だ

難しい積分の簡単解法 留数とその応用

第4章 無数の波から生まれる不思議(フーリエ解析
この章はすごい出来だと思いました。「今日から使えるシリーズ」で「フーリエ変換」を勉強した後でも
読む価値があると思う。こっちのほうは、「とにもかくにも、フーリエ変換が使えるのであれば、数学的な
ツメをゴチャゴチャやらんでもええ」というポリシーで突っ切った部分がる。
なぜかというと、「微分積分」「微分方程式」が別冊で控えているという「政策的判断」があったからだと
思う。
道具としての「フーリエ変換」ではなくて、公理から導出される「フーリエ級数」、そしてそこから
派生する「フーリエ変換」を扱うというのは、「事象にとにもかくにも数式を引っ張ってくる」のではなくて、
数式の演繹・計算から、「フーリエ級数」をもってきて、後で、事象にはめていくという「数学サイド」の
ポリシーが感じられる。なぜ、こういうことができたのかというと、「微分方程式」を第1章に
もってきているから。
関数を微分積分することを容易にすることが目的という文脈は、本書のように危険な「分野横断」的な挑戦を
している場合のほうが、はっきりしていると思う。こういったところに、「慶山」さんの「仕事」が
反映しているのではないかしらとか。想像したりしています。


すべては波の重ね合わせ フーリエ級数

不思議な威力を発揮するディラックデルタ関数

この節のデルタ関数の取り扱いは、「今日から使えるフーリエ変換」より深いかもしれない。

知っておくと便利な基礎事項

フーリエ変換へ肉薄!

ラプラス変換のエッセンス
なんとか、ついていっているような、そうでないような・・。

現代を支えるAMとFMの話
ここまで、いくのか。「放送」の技術的理解だね。

追記
http://www.nhk.or.jp/professional/backnumber/100216/index.html
研究紹介 | 理化学研究所