化学攻略の関連エントリー 想定 東京大学2次試験

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数学と英語以外の勉強は、学校の授業をよく聞き、先生がすすめてくださった参考書を何度も解きました。化学は少し苦手意識があったので、『化学重要問題集』や『セミナー化学』を繰り返しました。また、得意だった生物は入試問題が載っている問題集を解き、初めて知ったことを資料集やインターネットなどで納得するまで調べ上げてまとめました。このやり方で、たくさんの問題を解かなくても、触れた知識を確実に自分のものにできました。(続く)」

 こんにちは、東京大学医学部医学科5年の佐藤です。
 今回は新しく高校3年生になる人向けへ今後の勉強のアドバイスを書かせて頂きます。

 主に参考書について書きたいと思いますが、具体的な本のタイトルというよりは使い方について書きたいと思います。
 使用目的にもよりますが、この時期なら同じ参考書を繰り返すのがいいかと思います。例えば、よく驚かれますが、僕は学校で配られた教科書傍用問題集『セミナー化学』を5、6周しました。それだけで化学が得意科目になりました。ただ、全ての問題を5、6周したわけではありません。
 最初の3週ぐらいは全て解きましたが、途中から気になる問題をチェックしておいて、その問題だけに絞っていきました。チェックした問題は基本的に解けなかった問題ですが、計算間違い等の場合はチェックしませんし、正解しても、もう一度確認する必要があるな、解く価値があるな、と思えばチェックをしました。今思うと、この間違えた要因や問題のエッセンスを考える行為がより勉強効率をあげていったのかもしれません。こうして繰り返すごとに自分用の参考書に洗練されていくので、どんどんに使い勝手のいいものになっていきます。自分にとって勉強になる問題を選ぶことで自分に最適な効率のいい参考書になるのです。
 
 しかし、同じ参考書ばかりやっていると、高卒生や優秀な人はハイレベルな参考書をやっていて周りと差を感じることもあるでしょう。しかし、そこで焦って人と同じもの、難しいものに手を出してはいけません。参考書を変えるときはよく考えて、自分のペースや進行状況に合わせて選択しましょう。僕の同級生の中にはいきなり難しい参考書に突入して、勉強のリズムが作れないまま直前期に基礎的な教科書に戻る、といった失敗をした人も多くいたので、注意してください。基礎的な参考書の方がエッセンスをつめこんでいるので、ある意味最も勉強になるのです。極論を言えば、難しい参考書はその基本を組み合わせて複雑にしているだけなので、東大のように基本的な小問の集合を素早く処理していくという試験には必要ないのです(ただ、東大理科三類に受かるためには難しい問題もとらないといけないので、難しい参考書も要らないわけではありません)。

 最後に、参考書とも関わってきますが、勉強量の配分です。
 一年通して言えることですが、勉強の計画はたてた方がいいです。1週間刻みで勉強量の目標と達成したものを記録していきます。予定は頭ではなんとなく考えて調整していても、感覚的なものになり、各科目の勉強が偏ってしまったりするので、しっかり紙やPCに記録していきましょう。この際、勉強時間ではなく、勉強量=参考書の問題数や章の数、で目標を立てましょう。苦手な分野は勉強時間をかけても、参考書の進みが遅いので、しっかり量を課すために必要な注意点です。また、一週間で勉強したことを記録することで、量やバランスを反省できますし、自分の勉強のペースを知ることで先への予定が立てやすくなるでしょう。そして、これを一週間ごとでも、一か月ごとでも誰かにチェックしてもらいましょう。客観的な意見を取り入れることでよりよい勉強の計画が立てられるでしょう。

 長くなってしまいましたが、参考書の使い方も勉強計画もどちらについてもいいたいのは、「上記の方法で勉強しろ」というよりは、「ただ闇雲に勉強するのではなく、効率が良くなるように勉強法は自分なりに考えて下さい!」いうことです。

『思考訓練の場としての体系化学 InWeb』

たとえば、かつて東北大医学部に進んだ大熊君は、合格手記の中で、『体系化学』を学んでから、
入試までは、『化学重要問題集』の解答を書き直しつつ、4-5回繰り返して身につけたと書いていた。
『化学重問』は、260題ほどの入試問題がセレクトしてあるが、これがパッとみて答えられるならば、
化学では十分に合格点がとれる、ということを実証してくれた。
 ふつうに医学部をめざすというのであれば、これをしっかり固めるので十分なのである。

そこで、もう一つの授業形態は、『化学重問』全範囲からのテスト演習である。
一回に、全分野から12-13問で60分で解いてみる。それを採点して解説する、
個人の弱点発見と補強には最適である。
すでに7回を終えているので、1/3の問題には触れたことになる。
もちろん、テストをつくるのは大変である。しかも、そのまま切り貼りしてはつまらないし、
答えを覚えていただけではつまらないから、すこし改変したりするわけで手間はかかっている。

しかし、それは時間内に確実に合格点をとる、という目標設定であるから、『体系化学』り
最後の一押しとして必要なことである。
・・・・まあ、こういうことは、本人真任せでも構わない面もあるのだが、
今年の生徒には、そこまでつき合うことが必要にようだし、
その出来(不出来)ぶりをみて、こちらも学ぶことがある
・・・・・そうやって『体系化学』ができたのだから、
新たな形式での原点回帰であると思う。

『化学重要問題集』(数研出版)書評
 その単元・分野を代表する良問を選び出し、かつ、毎年少しずつ入れ替えている。
それもあって、今年のテキストとしては2010版をネタにしている。
というのは、一通り終えたら2015版を類題演習してやればよいからである。
『体系化学』では、定量化学で筋を通してあるため、
定性的知識は、各所にちりばめた形になっており、
さらに、標準テキストであるから、枝葉のような、また重箱の隅のような知識はカットしてある。
そこをまとめ、かつ補うという意味で、目下、最良の問題集として採用している次第である。

今回は化学の学習を進めていくにあたっての大原則・予め心得ておくべき事項をまとめてみました。具体的な学習法についてはまた改めて説明していきますが、その為の前提となる基本ルールはここでしっかりと習得しておきましょう。

★学習の基本1:受験化学の取っ掛かりすなわち初修の段階では、必ず理論化学から取り組みその内容理解に焦点を絞った学習を行う。これによりその後の無機・有機分野の学習をよりスムーズに進められる。

※受験化学の分野は大きく【理論化学】【無機化学】【有機化学】の3分野に分けられます。大抵の参考書・問題集においてはこの順番で編集が為されております(まれに理論⇒有機⇒無機の編集順の参考書もあります)。初めて化学の学習に取り組む場合は、原則として理論化学から開始して、それから無機・有機の順に進んでいきましょう。
また、理論化学分野は全くの初修時においては基本事項からして難解かもしれませんが、ここで出来うる限り完全でなくてもよいので頑張って理解することに努めましょう。なぜなら理論化学分野は受験化学の全分野に内容的にリンクしており、しっかりと習得しておくことにより、無機分野・有機分野の学習においてそこで登場する化学反応の多くを理論立てて理解することができ、その結果一方通行的な暗記事項が減り、かなりスムーズに学習が進められるからです。逆に理論化学の理解が不十分なまま無機・有機の学習に取り組むと、単なる文字・数式の羅列の暗記を強いられることになり、本来興味深いはずの化学の学習が単なる苦行となるので注意してください。

★学習の基本2:初めて受験化学に取り組む際、あるいは化学が苦手な場合は講義型参考書(いわゆる導入書)から学習を開始するとよい

※物理とは違い現象に対する理解が比較的容易(要は原子・分子・粒子の挙動によるもの)であるため、適切な導入書があれば自学自習でも化学の基本事項をしっかり理解出来ます。全くのゼロレベルから学習を開始する場合、あるいは化学に極端な苦手意識を持っている場合は、初めから背伸びして問題集に取り掛かろうとせずに、基本事項の確実な把握のため導入書を熟読することからしっかりと取り組んでいきましょう。
まさに「急がば回れ」の格言通りであり、化学の学習はちょっとした取っ掛かりさえあればそれ以降の学習が一気に進むものなので、ここで焦る必要は全くありません。

物理の概要について先程お話ししましたので、今度は入試科目としての化学について書いていきます。
物理は苦手だが化学は得意という受験生は非常に多いですが、これには両科目の性質に起因するきちんとした理由があります。
受験化学が物理と根本的に異なる点(あくまで大学受験においての違い)は、公式の成り立ちに関する理解よりも、その公式を使うべき場面の把握すなわち運用の仕方に重点が置かれていることです。すなわち化学は入試問題を数多くこなすことで公式運用に対する【慣れ】が得られ、化学現象について深く理解していなくても正答出来るようになります。すなわち【こなした問題数に比例して学力がつく】ということです。
化学現象について表面的に理解することは比較的容易(原子分子の運動や反応に帰着されるため)なのですが、徹底的に本質的な部分から理解するということは物理に比べて極めて高度かつ多岐にわたるため非常に困難で、また大学入試上メリットもほとんどありません。したがって【問題を解くテクニック】のほうに教育者側も学習者側も焦点を当てていくことになります。練習量がモノをいう科目なので、絶対的基準としての目標が立てやすくこの点が化学を得意科目とする受験生を多く生み出していると言えます。
しかし、化学は今一つだが物理はかなり得意という受験生が少数ながら実際に存在します。そして実際に物理ではかなりの高得点・高偏差値を叩き出します。そのような受験生はまず間違いなく【天才】です。物理を原理から理解していますから必然的に数学もかなり出来るわけですが、一方で“やれば出来る”化学の学習がおざなりであるといった趣向の偏りを示している点もいかにもそれらしいと言えます。実際私もそのような受験生の指導にあたった経験がありますが、“苦手な化学”を克服出来るよう尽力はしましたが無理に得意科目にするべく努力を促す必要性は無いと思いました。ちょっとしたメンテナンスに留めるだけで勝手に志望校に合格してくれるだろうという【勝算】がありましたし、事実皆あっさりと合格していきました。
話が脱線しましたが、要するに【練習量を積めば何とかなる】化学は、大多数の医学部受験生にとって、是が非でも得意科目にしなければならない科目であるということです。継続的な努力により、必ず上記のような天才肌の受験生と肩を並べることができます。医学部受験には色々な戦略があって然るべきですが、いずれにせよ化学は得意にしなければもったいないです。

化学の勉強

学校で配られる所謂教科書傍用問題集をまずやった。俺はセミナー化学。
難易度ごとに分けてやる(例題一周後に応用を、みたいな)人もいるだろうけど、つか俺の友達で居たけど、
章末も含め順番通りに解くのが良いと思う。
その方が深くまで知識が身に付き、頭にも残りやすい。
解き方は数学と同じで。解説は分らないところ知らなかったところを下線しておくと、2周目以降やりやすい。そこだけ読めばいいから高速化できる。

知識面:新研究通読した。なかなかおもしろかった。現浪で一周ずつ読んだ。
問題見たときわからなくても、「んなのしらねーよ藁」じゃなくて「ちょw載ってたww読んだのに忘れてたうほっww」ってなるからな、姿勢が変わる。
今年の東大化学もこれに載ってるやつ出たしね。
時間無いなら読むか読まないかは好き好き。他に大宮とかDoシリーズとかあるからな、ま好きなやつで。

問題集はこの次は重問が鉄板だが、俺は精選化学にした。友達が精選物理いいおって言ってたから同じシリーズでなんとなく
セミナーみたく暗記事項が載ってるし(セミナーより少しだけマニアックつか多い、必要十分かな)、一通りの問題を扱っている。
難易度もセミナーからなら無理なくちょうどいい。コラムもいい。重問はタヒ(
こいつは試験会場までお供した。
解き方はセミナーと一緒。下線引くのも一緒。
東大と医大以外は典型問題が多いし、これでおkと思う。受験期解いてみたけど医学部以外は困らない点数だったし。
ちなみに京大の25ヵ年はこの本くらい基礎レベルの確認にいいらしい。実際典型が多い。

東大化学の問題集は、新演習が鉄板かと思う。俺もそうした。
…だが、難しいばかりで傾向の違う新演習は、自己満足の域を出ないと思われる。
主観的印象を端的に言えば、東大は大学の知識を題材とした文章をリード文とし、その上で基礎を問うているのに対し、
新演習の問題は総じて短く、扱うのは末端の知識に終始してる。

これさえできれば満点取れる、とかいう謳い文句が溢れているけど、
果たしてその人たちが新演習をやったかどうかさえ疑問。

http://kobashijuku.blog2.fc2.com/:東京大理科3類合格者で、元講師の人

小橋がオススメする教材及び活用法は別途紹介するとして、まず難関化学を征服する為の大原則を書いておきたい。

今回の東大化学をみて何を感じただろうか。東大化学(60点満点、75分前後)に立ち向かうとき、容易に気付くのは以下の事項だろう。

(1)市販汎用問題集では滅多に見ない主題、出題形式が多い
(2)高校化学の範疇を逸脱する主題、出題が多い
(3)制限時間の割に問題数が多い

多くの受験生はどうしても(1)や(2)に目が行きがちである。「難しい問題集をやり込めば化学の理解が深まり豊富な知識が身に付くだろうし、自然と(3)への対処、つまり解答速度も上がるだろう」と考える。その結果自分のレベルに適合しない難問集や、大学レベルに踏み込んだ(気にさせてくれる)参考書を喜んで買ってしまう。そして結果が伴わずに落胆することになる。

しかし、東大受験生のほとんどにとって、満足な点数を取れない最大の原因は(3)なのである。来年度の受験生に声を大にして伝えたいのは、いくら難問・珍問・新傾向の問題を対策したところで解くスピードは上がらないんだぞということだ。

東大化学の時間制限に比して「問題数が多い」というのは誰が見ても明白で、小橋自身も東大の全科目で化学が一番「時間が足りないという焦り」を抱かせるものであった。

例えば今年の東大第1問はほとんどの受験生にとって目新しく感じただろうし、新しく受験生となる諸君の目には「いったいどうすればこんな問題が解けるようになるんだろう」と途方に暮れた者もいるかも知れない。

でも大丈夫。基礎(初歩ではないぞ!)をみっちり誤魔化しなく理解しながら机に向かっていれば(その方法は別途紹介する)、ちゃんと解き方が見えてくる。無理に背伸びする必要なんかない。

そんな問題に怯えるより先にやるべきことがある。それは典型的な良問を解き込んで、このパターンにはこう、あのパターンにはああ、というような「型」を身体に染み込ませることだ。

東大化学で満点近い得点を連発するなんて、特殊技能か何かのように感じるかも知れない。もちろんある意味では(他の受験生はとてもそんな点数を得られないという意味では)特殊に違いないが、持って生まれた特別の才能が必要かという意味では否である。

歴代の生徒達で「ほぼ満点」を取っている連中に共通するのは、東大化学にある「思考力を試す問題」と「どんな受験生でも解くべき標準以下の問題」とで、後者を圧倒的に素速く片付けてしまい、時間的余裕を確保した上での思考力を発揮している点である。

東大がいくら「思考力を試す」なんて言っても過大評価、つまり怖じ気づいてはならない。入試で試される思考力というのはあくまでも「時間制限」という枠組みの中での差を計るものであり、真の独創性を計測するものたり得ることはない。つまり、時間さえあれば(かつ基礎が十分に固まっていれば)難しくも何ともないものが多いのが現実である。

長くなったので続きは次回のエントリにて。

高校化学を学ぶとき、その用語の定義を最も上手に教えてくれるのは高校教科書だ。「教科書を読め」と小橋が口を酸っぱくして訴えてきたのはこういう理由がある。高校教科書以外でとなると、小橋は三省堂の『化学小事典』を勧めてきた。間違っても予備校出版物や参考書に求めてはならない。出版までに費やされた頭脳の質と労力の桁が違うからだ。

東大化学の問題を作る人、採点基準を考える人、採点する人。それらは全て化学の専門家であり、専門用語を日常的に使いこなしている人たちだ。彼らに挑むには、まず最低限同じ土俵に立つための、「言葉を共有する」努力から始めたい。

専門用語の定義を押さえる。

今さら何をそんな当たり前のことをと思うかも知れないが、まぁ騙されたと思って点検してみるといい。より高みへ確実にステップアップできるから。

例えば小橋が最初の授業で必ず訊く質問。

「原子量って何?」
「質量数って何?」
アボガドロ定数って何?」
「イオン反応式って何?」
「そもそもモルって何?」
イオン化エネルギーって何?」
「電子親和力って何?」
イオン化傾向って何?」etc.

いずれもどんなに薄っぺらな教科書にも必ず定義が示されているはずのもので、どんな受験生でも絶対に見たことのある言葉なのに、多くの(自称)ハイレベル受験生は説明に詰まる。何とかあやふやながらそれらしい定義を言える生徒でも、「じゃあそれを初習者に説明してみて、彼らが理解出来るように」と言うと途端に自信をなくしてしまうだろう。初習者に胸を張って「この言葉の意味はこうだ!」と言えないようでは一流の受験生を名乗れない。

化学がイマイチ伸びないと悩んでいる諸君。或いは、誰よりも少ない労力で化学を得意にしたい諸君。ノートを一冊用意しよう。そして、教科書の太字(或いは諸君がこれはと思う専門用語)を見出し語にして、その言葉の定義を一行で説明してみよう。必ず一行で、だ。言わば、非常にコンパクトな化学用語辞典を自分で作ってしまえということだ。

もちろん、あらゆる専門用語を一行で完璧に説明することなんか不可能なのだが、最低限これだけは述べねばならぬであろうことを抽出し、取捨選択し、何とかまとめてみて欲しい。この作業は非常に為になる。

この際、完璧主義に陥ってはならない、という注意を念のためにしておく。

別にこのオリジナル辞典は人に見せるものではないので気取って丁寧に書く必要はないし、間違ったり不十分だったりすれば気付き次第加筆訂正すればいいし、教科書の太字以上にマニアックなものまで拾えばそれだけで時間と労力を浪費しすぎるし、あくまでも化学のイロハを自分なりに整理するというスタンスで簡単にまとめればいい、ということを忘れてはならない。辞典作りに熱中したり、問題を解く時間を惜しんだりしてしまうようでは本末転倒である。

このようにして、自分が絶対に自信を持って使いこなせる言葉を一個ずつ増やしていこう。30個も拾えば違い(成長)に気付く。60個も拾えば別人になる。200個も拾えばもう高校化学の理解はかなり完成に近いものになるだろう。教科書の太字とはそういうものだ。

これを今からコツコツやるか、それとも数多くの参考書を読み、数多くの問題集を解くことで自然に用語の意味を把握するのを待つか、どちらが賢い学習法だろうか(もちろん、両方行うのが一番優れているのだが)。

「専門用語の定義確認」の重要性を、賢い受験生なら言われなくても理解しているものだが、殆どの受験生はなかなか気付いてくれないものだ(僕が幾度力説しても!)。本番直前に自分の理解があやふやなことを知って愕然とする人が大変多い。

「自分の伸び悩みは案外基礎があやふやだからではないか」と感じた諸君、ぜひ試してみて欲しい。

そして、既に気付いている諸君もいるだろうが、この学習の有効性は化学にとどまらない。

特に僕の場合、化学に限らず受験勉強は体育だと思っているので、「基礎を固める」ことは「反射的に方針が立ち、解法を想起できる」ことだと指導しているのだが、この「反射的に」という言葉もまた抽象的であり、生徒を惑わしたこともあるようだ。

『基礎が固まった生徒』というのはどういう生徒を指すのだろう。
例えば数学。全分野の教科書例題クラス(章末問題クラスではないぞ!)で、一目見たときに「これから何をすべきか」「どのような道具=定理や公式を使えばいいか」という方針が豊かに溢れ出すことを言う。

与えられた条件、数式を見たときに、「この問題を解くには相加相乗平均がキモだな」「これは分子を有理化すればいいな」と思い浮かぶ。化学であれば「これは状態方程式よりもボイルの法則だな」「それはソルベー法の類似反応だね」と閃く。

そして、教科書の太字クラスの重要単語はちゃんと正しい定義を口頭で述べることが出来ること。「ケーリーハミルトンの定理」「平均値の定理」、「ヘンリーの法則」「飽和蒸気圧」「芳香族」。別にマニアックなもの、マイナーなものなんか後回しで良いんだ。

こういう段階まで何とかよじ登っておかないと(これは自力でこなせるものだし、自力でこなすべきものだ)、どんなにいい問題集を解いても、どんなにいい授業を受けても、まるで意味がない。塾なり予備校なりの講義でこの基礎固めを期待しているようでは話にならない。もちろん、基礎固めを謳う講義もあるのだが、原理的にどう考えても「全然授業時間が足らない」はずであるし、各自のペースが異なることを考えればこのような基礎固めを授業料の高い集団教育に期待するのは非効率的であり、結局は気休めでしかないと断言する。

理想的には、この基礎固めは授業時間に余裕のある高校の授業を活用するのが賢いだろう。どんなに有名・良質な現役塾に通っていても、高校の授業を疎かにするようでは話にならない。

続きはまた。

まずは基本となる『型』の習得が大事だ。絶対に、何よりも、それこそが大事なのだ。

小橋のいう『型』とは、頭で理解していることを、特段の意識を要さずに、自然と手が動くような、ほとんど身体的反射運動のような段階まで習熟した状態を指す。

独創性だとか思考力だとか柔軟な応用力だとか「ひらめき」だとか、全て「型」を習得したあとで意味を成す言葉である。その点で、真の受験勉強は音楽などの芸術や、武道・スポーツの習得などと何ら相違ない。ここをしっかり踏まえている受験生が驚くほど少ない。ただ漫然と手を動かしているだけではダメなのだ。

化学でいえば、気体の挙動に対してボイルの法則、シャルルの法則、ボイルシャルルの法則、状態方程式、分圧の法則、蒸気圧といった化学法則・概念の中から、いちいちその定義を思い出すまでもなく、問題文を一読しただけで最も有用なものを選択して最も端的な方程式を立式し、それを速やかに解くといった、東大合格者がそれまでに何百回繰り返してきたか分からないほどの「単調作業」を手に覚えさせることだ。

「そんなことの重要性は今さら言われるまでもない」と言うかも知れないが、今までの生徒達を見ると、その大事なことがてんで分かっていないじゃないかと悲しくなることの方が圧倒的に多かった。諸君が習得すべき『型』は「最も応用の利く形式」であるに越したことはないが、「最も応用の利く形式」とは、多くの志の高い東大受験生が考えるほど高尚なものでもないし、難解なものでもない。そこに一刻も早く気付いて欲しい。

難関化学の鍛練にはもちろん総合問題集が有用であるが、主眼が『型』の習得であるのならば、敢えて難しい問題集を選ぶ必要など無いし、むしろ有害ですらある。

東大受験生の多くはミーハーであり、また東大の出題に難問が多いこともあり、どうしても難しめの問題集に手を出しやすいのだが、ろくに『型』を獲得していない者が例えば『新理系の化学100選』(駿台)だの『化学の新演習』(三省堂)だのに飛び付くと全くろくなことがない。はっきり言おう、東大理三対策ですら総合問題集としては『重要問題集』(数研出版)だけで十分なお釣りが来るものなのだ。それどころか『セミナー化学』などの、一部受験生が軽視しがちな教科書傍用問題集の方がよっぽど役に立つんじゃないのかと言いたくなる東大受験生の方が多いのが真実だ。

実際、小橋の生徒で理三や京医、阪医に進学した者のなかでも市販教材は『重要問題集』のみという者も決して稀ではなかった。中高一貫校で早い時期から化学を学習し、かつこれから浪人する(つまり既に受験生として標準的な学力がある)のであれば、かつ既にそれなりの『型』を習得したと信じるならば、『100選』『二見ハイクラス』『新演習』に手を出すのを止めはしない。止めはしないが、諸君に足りないのが「解答速度」であり「処理精度」であると自覚しているのなら、計算ドリルのつもりでより平易な問題集を複数回やり込んだ方がいいと僕は信じる。

熱い要望にお応えして計算ドリル第二弾を作成した。
第一弾とあわせて約150問。これだけで化学全範囲の計算問題をカバーしているはずだ。しかも小橋のキャラクターを反映しているのか、どの問題もかなり汚い途中式、汚い結果になるように作ってある。市販の問題集にある問題がいかに「整備」されているかがよく分かるだろう。

化学が面白いと知り、脳内シミュレータでの思考実験を通じて論理的な思考を身に付け、必要十分な知識を習得し、志望校の過去問を順次解いていく。

そこまでやった人間が最後に痛感するのは「計算力の壁」である。

特に東大受験生。
ライバルが何をやっているのか知りたいだろう。ライバルの使う問題集、予備校の授業、テキストを知りたいだろう。去年、一昨年、華麗に理三に合格していった者達がどのような教材を使っていたのか、そんなもの、知りたければいくらでも教えてやる。実は、そんな情報にろくな価値などない。それを得意げに吹聴する者もいるし、高い金を要求する者もいるが。

どんな科目でも重要なことは「どの教材を使ったか」ではなく、「どのように使ったか」である。そんなこと当然じゃないかと言うかも知れないが、それでも多くの受験生は前者に意識が流れているように思う。まだどこかで「成績が飛躍的に上がる魔法のような教材」の存在を信じているからかも知れない。そうだとしたら、何てお目出度いんだろう。

東大受験生。
解けて当たり前の問題(=入試問題)を解けたと喜んでいては一流になれない。喜ぶのはその先、つまり人より速く正確に解けるようになってからだ。

その修行のひとつが反復訓練であり、小橋塾としては計算ドリルを用意している(去年までの生徒からは「なんで同じものを用意してくれなかったんですか」と恨まれてしまったが…)。これを本番までに10回解けと指導しているが、既に4回終えた者もちらほらいるようだ。

化学でいえば、三省堂の『化学小事典』が有名だ。僕の生徒には購入を強く推奨していたが、今では高校生用の電子辞書に標準装備されていることが多く、なかなか紙の辞典を買ってくれないようだ。

分厚い参考書でも手に入らない情報が『化学小事典』には載っている。しかもそこらの予備校講師が書いたものよりはいくらか信頼に値する精度で掲載されている。この辞典はその後、理系の大学生として勉強を始めるときにも役立つものでもあるので、僕としては図説とセットで是非とも手に入れて欲しい、使い込んで欲しい教材である。

僕は高校生時代、この辞典をパラパラめくっては目に付いた項目を読み、分からない用語があればさらに調べるという、芋づる式な遊びをしていたものだ(内職のようなものだ)。お陰で大体の項目は受験までに頭に入っていた。「知識では」誰にも負けなかった自信がある。同社の「物理小事典」や「生物小事典」も同様だ。

別に受験生全員にこういうことをして欲しいとは言わないが、それでも手元に信頼のおける辞典を用意しておくこと、そして適宜参考にすることだけは勧めたい。

ところが、既に述べたように、この辞典が電子辞書にオマケのように装備されているが為に受験生はこれを使わない。その価値が分かりにくいこともあろうが、実は(多くの受験生が勘違いしているが)、電子辞書で調べるというのは意外と手間が掛かるものなのだ。

私事だが、先日ある研修病院の採用試験を受けた。そこの病院は珍しいことに、筆記試験が英文和訳のみ。長文が四題、半分は医学的な話題であるが、いずれも専門知識は不要のものだ。これを90分で解かされたが、いや〜脳の錆び付きを痛感した。

英文を英語として理解して読むことはそれなりに慣れているわけだが、それを改めて和訳しろと言われると特別な、しかし難関大受験なら当たり前の思考回路を使わなければならない。

しかも制限時間90分は分量の割にかなり短い。辞書の持ち込みが許可されたので、受験時代に使い慣れた紙の辞書を持ち込もうとも思ったが、余りに遠い場所にあるので誘惑に負けて荷物にならない電子辞書を持参した。

それでよく分かったが、「電子辞書はとにかく時間が掛かる!」。項目に辿り着くまでもそうだが、その項目の全範囲(語法や例文、慣用表現)に目を通すのも、紙の辞典に比べて十倍は掛かるんじゃないだろうか。ましてや派生語まで見ようと思ったら日が暮れて話にならないレベルである。

電子辞書は手軽であるがゆえに使わなくなる。それは化学事典に限らず、英英辞典もそうだ。せめて自宅で学習するときだけは、紙の辞典・辞書を使って欲しいと切に願う。

旺文社の『全国大学入試問題正解』通称「電話帳」はご存じだろう。

値段も高く、解説が親切からは程遠く、しかも所々に間違いがあるという点で敬遠する受験生も多いだろう。予備校講師用の資料と考える人もいるかも知れない。でも、使い方次第では面白い効果が出てくる。

自分の志望校ではない大学の問題に、ザッと目を通してみて欲しい。「おっ珍しい!」と思う問題、「これは解けるな」という問題、「これは志望校でも出そうだな」という問題、「これは解く意味ないだろ」という問題、そういう風に各自で判断して、「これは解いてみっか」と思ったものだけ解けばいい。

この鍛練の目的は「惰性を廃し、実戦的な速解力・カンを鍛えること」だ。それ以外の問題は解答をザッと見て、理解しにくい点があればそれを指導者に聞けばいい。

「重要問題集」などの総合問題集は、非常に汎用性の高い、いわばクセのない良問で満たされている。ところが実際の入試問題は驚くほどヘンテコな出題があったり、独特の出題形式であったりと、新鮮なバラエティを湛えているものだ。

例えば数研出版の「重要問題集」だけを本当に消化し尽くして噛み締めることが出来るのであれば、それだけでどんな大学の入試問題でも合格点を超えることは十分に可能だろう。しかし、諸君が「惰性」という生きる知恵を身に付けているがために、現実的には不可能になっている。

惰性を恐れよ!

つまり、「見たことのある問題」を演習・復習するときに「見たことのある答え」を作ることで慢心してしまい、「単にその特定の問題に見慣れただけ」でありながらその分野の出題一般を征服した気になってしまうのだ。

このようなとき、クセのある問題をある程度浴びることが目を醒ます切っ掛けになる。決して入試問題として良問とはいえないものでも、いや、悪問だからこそ、改めてじっくり考えようという気にさせてくれるものなのだ。

ちなみに小橋塾のテキストはどれもクセだらけであり、どの問題も入試でそのまま出題されうるのに、強者の受験生が頭を悩ませるように作ってある。「こんなの本番に出ねえよ!」と言っていた生徒達も、受験が近付くにつれ「…意外と出るかも」などと言い出し、受験が終わってみれば「志望校の問題を作ったのは小橋先生かと思いましたよ」と笑って言ってくれるのはそのせいだ。

惰性で解くのはもう止めよう。クセのない、サラリと解けてしまう良問ばかり解くのはもう止めよう。

絶版!『難関大への演習 化学』Z会出版

オススメ度:古本屋で見付けたら迷わずゲット!

東大・京大・早慶の4大学の過去問そのままという、ある意味非常に「お金の掛かっていない」問題集なのだが、以下の点で興味深い。

・2002年の出版なので、10年以上昔の4大学の過去問を楽しめる。これは貴重だ。

・東大受験者は京大の、京大受験者は東大の、東大・京大受験者は早慶の、それぞれの過去問をちゃんと解く機会は滅多にない。

・各大学の難問の中でも演習効果の高い有名問題を抑えてある。無駄に難しい問題は排除されている。

もうやることがなくなって来た…そんなあなたにこの一冊。Z会出版もこの時期を境にふぬけた本ばかりになってしまった…。

河合塾『新こだわって!国公立二次対策問題集化学』

オススメ度:特定分野の補強に有用

全部で4冊。なかなか面白い問題(過去問)が載っている。使い方としては、酸塩基理論や分配法則など、『重要問題集』などの総合問題集だけではどうしても演習不足、類題不足になってしまう特定分野の補強用途に向く。『重要問題集』の代替になるものではない。

簡単〜標準な問題が多いので、人によっては全問解く必要はない。ある生徒には<難>マークが付いているものだけを薦めていたこともある。

このシリーズは使いやすいので、幅広い受験生にお奨めしたい。

はっきり言うが、普通の東大理三受験生、京医受験生なら『重要問題集』で十分だ。それ以上の問題集を望むなら東大の過去問をゼヒどうぞ。

実戦化学1・2重要問題集 2012年

実戦化学1・2重要問題集 2012年

数研出版編集部『化学I・II重要問題集』

オススメ度:総合問題集に迷ったらコレ

定番中の定番。総合問題集として基礎的なものからやや発展的なものまで全範囲をかなりカバーする。三省堂『化学I・IIの新演習』に比べても汎用性が高く、現役生がこれから本格的に勉強するなら『重要問題集』を薦めたい(ゼロからなら教科書傍用問題集を併用のこと)。

最難関レベルを受験する生徒ではしばしば本書を軽視して盲目的に『新演習』に取り組もうとする者も珍しくないが、総合問題集としては本書で十分であり、より速く一周できるこちらを繰り返し解く方がコストパフォーマンスも高いだろう。

かつて高校二年生の生徒で、本書を十日間ほどで解いた猛者(現役で理三に合格)もいるが、とにかく駆け足ででも全範囲に触れておくというのが効率的学習の基本であり、そのような目的としてもかなり使い勝手の良い問題集だろう。

欠点を挙げれば応用・発展問題の比重が少ないので、特定の分野の演習がどうしても不足する。従って東大や京大を受験するのなら他の問題集にも手を出したくなるだろうが、もはや総合問題集を買い足すよりは、東大・京大・東工大などの過去問や東大実戦・オープンなどの模試の過去問(市販)を演習する方がいい。それくらい、本書は踏み台としても良書である。

『重要問題集』は同シリーズの物理や生物のものに比べても満足度が高い。受験化学が独習しやすいとされる理由の1つは本書の存在によるところが大きいだろう。

余談だが、高校生の僕も本書のお世話になった。当時は解説が薄っぺらく、かなり(初習者には)扱いにくい問題集だった。それが今では豊富な図解を交えた説明が解説が付属していて、今の高校生は本当に恵まれているなあ。

講談社BLUE BACKS『高校化学とっておき学習法』大川貴史

オススメ度:興味があればゼヒ

いきなり一般書で恐縮だが、今どきの高校生はBLUE BACKSすら読まなくなっているそうなので、丁度良い機会だからそこから一冊紹介しようと思う。

たぶん、ほとんどの受験生は、一般書を受験勉強の参考にしようなどと夢にも思わないはずだ。このテの本はなおさらに。でも、この本だけはせめて立ち読みしてから判断して欲しい。

本書は高校化学の全範囲をレクチャーするものではないし、ある分野では高校化学を少し逸脱し、大学教養レベルまで触れている点に注意したい。また、初学者には少し取っつきにくいと思うので、それなりに大学入試問題の基礎〜標準レベルが解けるようになってから触れると良い。

実は、小橋がこの本の存在を知ったのはつい先月のことだ。某大学医学部に在籍し、家庭教師で化学を教えている教え子が、「先生の授業みたいな本を見付けました」と報告してくれたのだ。手に取ると、なるほど…彼女がそう思ったのも頷ける。