「場合の数と確率」独学編

駿台受験シリーズ 分野別 受験数学の理論3 場合の数と確率

駿台受験シリーズ 分野別 受験数学の理論3 場合の数と確率

第1章 数え上げの原則
第2章 場合の数 28の例題
第3章 確率 19の問題 3つの追加演習
第4章 確率分布と期待値 11の例題
付録A 数列に必要な数列の知識

駿台文庫の中のシリーズもの。
入門レベル
基礎レベル カバー
中級レベル カバー
上級レベル カバー
かなりのレベルなのではないかと。
東大、京都大、神戸大、一橋大など、そうそうたるメジャーな名前が
かなり多数収録されています。
この参考書の筆者のスタンスは、「定石」を徹底的に復習するというもの。
復習するというより、「定石」で正解がとれる問題を落とさないようにしようという
とても正当な方法を採用している。
そういえば、この間、受験参考書の売り場で手に取った本には数学の問題もその8割は
典型問題によって構成されていると、書いてあったようななかったような。
「定石」といわれる解法をもってしても、解決の糸口が見えない問題に関しては
「敬して、遠ざける」。
どこぞの進学塾では、算数の入塾テストが5時間かけて実施されると聞いたが。
http://www.sundai-net.jp/fr/syuto/ikkan/eisai.htm

1994年以来IMOメダリストを輩出している英才セミナーが、中1・中2生を対象とした「英才セミナー選抜試験」を実施いたします。英才セミナーを受講するためには試験に合格する必要があります。
受検算数では無敵を誇った皆さんの挑戦をお待ちしています。
駿台英才セミナーには指定校制などはありません。入学希望者全員に「英才セミナー選抜試験」を受験していただきます。この試験は持ち時間5時間で、他の人に解答・解法を聞く以外は、参考書を見ようが食事を取ろうが自由に取り組んでいい、というユニークな試験です。(ただし、携帯電話の使用は禁じています。)数学好きの受験生にとっては「楽しくて時間が経つのも忘れた」という至福の時間が流れていく…。

そんなことしなくても、凡人のこつこつとした努力で、難関大学の数学だって
合格点をとることは可能なのだと。
私はこのエントリーの他に、数学の成績をあげるための方法論になるものに
関しては、それなりの時間を使って、収集してきた。
どの先生も最後は、「定石」の完全な習熟による典型問題の取りこぼしの未然の防止を
高得点への道のりだと。そういう結論をいっている。
だとしたら、学生としては、長年、大学受験数学の入試問題を解いてきた
「大先輩」のアドバイスは素直に聴くべきなのだろうと思う。
ようやく、「場合の数と確率」を取り扱う単元が一通りの完成を見たので
ちょっとブログに書いてみようかと。アウトプットも大事です。
とにかく、熱心にインプットだけを継続する人は世の中にそりゃもう多数いるのだろうと
思いますが、それをうまいことまとめ上げて「出荷」できるようにする人は
おそらく、インプットだけの人よりはるかに少ないのだろうと思う。
インプットの効率に関して、多少不得手であっても、アウトプットが大事だという
「勘所」を押さえていたら、不得手を補ってあまりある果実を手にすることが
できるのではないかなと。そんなことを考える。
私が、いま取り組んでいる問題集というか、学習参考書は他の参考書より
すこしばかり変わっている点がある。
高校数学の単元ごとの理解、基本的な公式や定理の解説などに重点をおいている
「教科書」の機能と、その「教科書」で理解して「使えるようになっているはず」
の定理や公式や、解法を駆使して、実際に大学の入試に出題された問題を
攻略できるように演習を繰り返す「問題集」の機能が分離している点です。
私は、高校の時、文系クラスを選択していたので、どうしても高校数学全般に
対する知識や、演習量が足りないという問題を抱えている。
正直、高校生の時に理系クラスを選択した人の数学力に対しては、なんとも
合理的ではない「不安感」をもっている。この不安感を取り除くための方策というものも、文系が理系の勉強に着手するときの大きな壁になっていると思う。最近、iPhoneのアプリでも英語のリスニングの継続時間を記録することができるようになったり、洋書を読みこなして行く際に、自分が、総計にしてどれほどの英単語数に目を通したのかといったことが統計で一目瞭然にわかるようなものが、安価に流通している。個人、個人が勉強した合計の時間や「量」というものが、比べものにならないくらいに、可視化されてきているという側面がある。これからこういうアプリが普及して、資格試験ごとの合格に必要な勉強時間であったり、演習が必要な問題の数であったりするものが、すっきりと、つまびらかになれば、こういういいようのない、「理系科目コンプレックス」も解消されるかもしれない。公開されている勉強時間と、必要な問題の演習がコンパクトにメニューになっていて、その受講が簡単になったらの話しですが。
「教科書」の機能と「問題集」の機能が分離されているので、筆者からすると
学生に教えたい内容を、しっかり限定して、限定された範囲をじっくりと説明することが
できるというメリットが生まれる。
学生は学生で、自分の苦手分野をはっきりさせて、徹底的に、狭く深く、単元を見つめ直す
ことができるので、いい加減な復習にはなりにくいというメリットがあるのではないかと
思う。もちろん、単元別の勉強を徹底することにもデメリットはある。東京出版のような「数学マニア」的な人たちを読者にした問題集なのでは、分野と分野の垣根というものに、本能的な嫌悪感を示す人もいるようだ。そういう人たちは、「設定する」「場合分けする」「試行」するなど、より、どの単元でも要求される「計算作業」の分類をして、問題集などを編纂する。いわゆる「横割り」といわれているアプローチをとってくる。今回、私がエントリーを書いている「受験数学の理論」おそらく、このさき「縦割り」の受験参考書の代表格になるのではないかと思う。「横割り」のアプローチと「縦割り」のアプローチがどちらが、第一志望の学校の入試問題で高得点をとるのに貢献するのかというのは、おそらくこの先も結論がでない難問だと思う。ただ、「縦割り」の「理論」のほうをやっていて思ったのは、「縦割り」の構成で、典型問題を、ひたすらやっているうちに、他の単元の学習にさしかかって、解法を編み出して行くときに、無意識に、他の単元で学習したことを応用していたという経験をすることができた。「縦割り」を徹底している中で、「横割り」の発想の勘所が自然と体得されるという筋書きはその可能性がゼロであるとはいえないのではないかと思った。
さて、「場合の数と確率」に関して何か書こうにも、先達が多くの苦労をして築き上げて
きたカリキュラムであろうから、なにせ恐れ多くて、あまり堂々とここに書こうという気にはなかなかなれなかったりします。
「場合の数」「数え上げ」という単元はどうもつかみ所がない。
三角関数であったり、微積分の計算などは、ある程度、問題のタイプ分類に応じた
計算手法がわかっていれば、それを「ある程度」機械的に当てはめることで
正解にたどり着いてしまうということがある。
「場合の数」にもそういう「タイプ別の分類に応じた数え方のパターン」があるのかという
質問をされれば、それは「やはりあるのだろうな。」
と回答する。そうでなかったら、この種の単元別の問題集が編まれる理由がない。
それと、もう一つ、この単元の学習に敷居を遠くにするのは「他の単元との融合」
があること。
といってもその「融合」の仕方もパターンが決まっていて、
「漸化式」を解いて、ある数列の一般項を求めるという手法を、
たとえば、四面体の頂点を1秒ごとに移動するような「動く点」が、時間経過に応じて
どの頂点にどれくらいの確率で存在しているのかという確率の問題を解決するときに
応用するというもの。
このさらなる発展編として、たとえば「神経衰弱ゲーム」のモデルで考えると
偶数枚の数字のカードがあり、そこから「神経衰弱のトランプゲーム」のようにあ
2枚ずつ、取り出し、その2枚が同じ絵柄なら、カードの集合から取り除き、その2枚がカードとして異なるものであれば、もとのカードの集合に戻すというような作業をN回繰り返したときの、ゲームの終了回数の期待値計算などがある。
シグマの計算、漸化式の処理方法など、他の単元の応用力をどんどん試してくる。*1
そういえば、本書では簡単な「ゲーム」をモデルにした例題や「基本演習」がいくつか掲載されていた。「じゃんけん」の問題なども掲載されている。
3人のジャンケン。
3人がジャンケンをして、あいこで終わる。
3人がジャンケンをして、一人が脱落する。
3人がジャンケンをして、一人だけが勝者になる。
2人のジャンケン。引き分けで終わる場合。
2人のジャンケン。片方が勝つという場合。
3人でジャンケンというゲームに取り組んだら、すべてのゲームの進行は
このたったの5つのケースに収斂していくと。
この5つのケースをN回つなぎ合わせていけば、何度目の勝負ごとの、残存するプレーヤの人数に応じた、確率の計算などができる。
高校生の時に、こういった問題に取り組んでいても、なぜ故に、簡単なモデルのゲームの計算を気持ちのわるいシグマ記号を駆使して、処理しないといけないのだという拒絶の感覚のほうが強かったような気がする。
ゲームプログラミングの学習でいくつかのタイプのゲームに触れたが、
複雑に見えるゲームも実は、かなり限定された要素の組み合わせで、進行をすべて
統括出来てしまうということが感覚的にわかってきたように思う。そういう感覚がわかると、このような問題で戸惑うことはなくなる。

分野別 受験数学の理論 (3) 場合の数と確率 問題集 (駿台受験シリーズ)

分野別 受験数学の理論 (3) 場合の数と確率 問題集 (駿台受験シリーズ)

第1章 場合の数 
第2章 確率
第3章 期待値

例題 28問題
基本演習の問題 55題

それでは、この問題集の使い勝手はどうだったんだということになります。
「教科書編」をいやというほど、やりこんだからか、「問題集編」はかなりスムーズに
解けたのではないかと、自分では思います。
「例題」にしても、「基本演習」にしても、まったく見覚えがないような
「出会い」はなかったと。「想定の範囲内」にどれも収まっていました。
つまりは、「教科書編」での枠組みがそのまま「問題集」に範囲されていると。
つい、この間も理科3類合格者の体験記を読みましたが、とある有名塾の出身者を
のぞいたら、同じような参考書が使われていた。
「1対1対応演習」「スタンダード演習」「新数学演習」
東京出版の三羽カラスの顔ぶれは、おそらくここ数年というか、数十年
変わっていないし、これからもかわらないのではなかろうかと。
受験数学最高峰の争いにチャレンジする人たちの定番がここまで変わっていないのなら
やはり、受験数学の勘所は「定石を落とさない」というところにおさまるのかな。
東大数学対策情報寄せ集め。

東大理系数学は全部で六題から成っています。最近の東大の 傾向としては問題は昔よりも易しくなってきています。勿論それは 昔に比べればということで、毎年(たまには例外もあるんですが) かなりの難問も含まれています。とはいえ標準レベルの問題は 毎年必ず数問出題されるのでそこは点数の取り所です。 さらに云えば、その標準レベルの問題さえ解ければ数学が足を引っ張ることは ないのです。

まだ、過去問の研究に着手していないのでなんともいえないが。
これが本当なのかどうかも、結局自分で検証するしかない。
受験数学で及第点をとるための方法論はこうしてみるとかなりカッチリ固まって
きているなと思う。
ただ、その方法論に乗っ取って、正確に作業を継続させるというのは結構
ハードルが高いのではないかと思う。
そこそこまとまった期間、受験数学と向かい合っていて思う。

具体的な各論めいたものも書いておくと、「場合の数と確率」の単元で
「理解への壁」が一番、高くなるのは「期待値」が登場するところなのかと。
サイコロの1から6の目それぞれに、1/6を乗じて、足し合わせるという
だけなんだけど。
サイコロを1回だけ振るのは、あり得るパターンが6個しかないから
話は素直に進む。
この問題集になってくると、こういう事象の限られた期待値計算だけでは
すまないものがちらほらと登場する。
問題の材料としては「サイコロ」なんだけど、振る回数がN回なので
とる可能性のある範囲が広くなってしまう問題。
6個の事象にそれぞれ確率の数値をかけて、足し合わせるというだけでは
すまない。基本的にはそこまでもっていかないといけないのだけど、
それを「素直」にやろうとすると、終わらないという問題。
その場合、計算がしやすい複数の期待値の合算で、お望みの事象の期待値を
出してしまおうという手法がのっているが。
これは、どうもピンとこなかった。
計算しづらかった期待値計算が、するすると、計算できる期待値の寄せ集めに
なるというプロセスがいまもって気持ちがわるい。(1351文字)
確率の計算のところでも、どうも気持ちのわるい東京大学の問題が一つ
あった。
正四面体を二つ使って、その辺を導線かわりにして、電気回路を作ってしまうという
問題。着想がおもしろいから採用されたのかな。
ただ、すこし気になったのは
「並列回路」を組むか、「直列回路」を組むのかで、場合分けをして、
お目当ての確率を出していくという流れになっているのだけど、
「回路」のパターンということを、「数学」の答案を作るときに持ち込んで
いいものなのかどうかというのが、すこし気になる。
数学の教科書のどこにも「電気回路」の導線の定義はのっていないだろうから。
たしかに、それで、それないに納得のいく模範答案が掲載されていたけど、
はたして、この解法をそのまま採用していいのかどうかというのはすこし
不安なところもあった。
求めたい数値を出すために、4つの事象の確率を計算するという問題も
あった。4つの事象の確率を未知数と設定すると、4つの方程式が成立して
その連立方程式を解いてしまうと、目標にしていた確率が出るという流れ。
こういう問題も、すこし離れた単元で習得することを、応用できるかどうかが
問われていると思う。
「問題集」のほうは、「教科書」のほうでも同様だけど解説が丁寧です。
問題が掲載されているテキストと、「解説」が掲載されているテキストは
別冊になっているので扱いも容易だと思います。
答え合わせをするのにも便利。
だから購入して実践使用にしようかなと決めたわけですが。
http://twin.blog.ocn.ne.jp/physicomath/2012/07/post_e493.html

購読している、岩波書店のPR誌「図書」に津田篤太郎さんが「日本医学の開拓者」という題でエッセイを書いていて、その冒頭に鶴見俊輔さんの著書「はみだしについて」からつぎのような引用がされている。

『定義を覚えて、その定義にすっぽりはまる実例をひく。これは、学生として試験の答案を書くときには適切な方法である。

だが、学問を開拓するには、それは適切な方法ではない。』

だからこそ、「定義」が大事になってくるということもあります。
受験勉強的に。

私はこの実例という語を読んで、すぐに思い出したのは、数学の書を読んでよくわからなかったときに、故 I 先生から「実例を考えたらいいですよ」と言われたことである。だが、そういう場合に限っていうならば、とても例を考えることなどできはしなかった。

また、これは友人の数学者Nさんなどもいつも言われることだが、実例の大切さは本当にその数学の意味がわかれば、実例をあげることができるはずだという。実は実例をあげることができないならば、まだその事柄を十分には理解していないという。

この「実例を考えなさい」とか、「実例を挙げなさい」というアドバイスはかなり普遍的に数学を勉強する人々に与えられるらしい。そして場合によってはこの例を考えることによって、それを抽象化すれば大きな理論となる場合もある。

数学者もはじめから抽象的には考えていない。あるモデルを考えてその性質を探り、それを抽象化して論文を書いているらしい。

「暗記数学」といわれているもののメリットの一つとして、単元ごとの難所を
「実例」で定着させて、知らない問題にも取り組めるようになるといういいところが
あるのではないかと思う。
「ケースメソッド」といったらいいのでしょうか。
http://kaji-lab.jp/ja/index.php?plugin=attach&pcmd=open&file=TimeIsPriorToMethodForEnglishLearning.pdf&refer=InvitationForStudents:English
学習にかかる「コスト」おもに「時間」というコストについて、鮮やかなひらめきが
掲載されています。
学生が、研究生活を円滑に進めるためのツールとしての英語を習得するための
時間計算。
TOEIC1点UPのためには3時間の学習が必要であると。
大学受験数学の修得のための時間コストってどうなのでしょうか。
1問の問題をやりこんで、習得するのに20分だとして
6問120分。
120分×5日分 600分。
これに、毎週120分の復習がはいる。
1週間で720分
1500問を6問で割り算すると、250日。
250日を5日でわると50。
50×720分 = 36000分
36000分を60分でわる。600時間。


こんなところなのかな。

上記にあげたリンクでは、学会で使える英語をマスターするために
2000時間の勉強が必要とのこと。
中学から高校までの英語の勉強時間の合計は1000時間いかないだろうと。
だからのこりの1000時間を自力で確保してTOEICを850点までもっていきましょうという
ロジックが展開されています。
結局は英語も数学もこつこつと積み上げていきましょうということに
なるのでしょう。
それがしんどかったりする。
勉強方法が適切かどうかという観点から学習の適否を判断するアプローチと、
勉強時間が必要な分量にたっしているかどうかで学習の適否を判断するアプローチと。
この2つがきっちり整理されているのがありがたいと思いました。
自分の勉強スタイルに対する確認点検がとてもスムーズになるような気がします。
受験勉強スタイルの英語のメリットについてもわかりやすい指摘が。
それは、「比較的良質な教材が安価に手に入ること」
だそうです。
いわれてみれば、そうかなと。(8063文字)

ゲームと確率の関係について、プログラマーの人のブログ
確率の夏 - やねうらお−ノーゲーム・ノーライフ

さて、確率によって合成/精錬がなされるというところまで話が進んだ。次はその確率を求める話である。

ラグナロクを例にとろう。ラグナロクでは防具のエルニウムによる精錬確率は+1〜+4までは100%。+5が70%。+6,+7が50%、+8、+9が30%、+10が20%である。+7の防具を+8にしようと思うと30%の確率でしか成功しない。無精錬の防具を+10にしようと思うと
70%×50%×50%×30%×30%×20% = 0.315%
の確率でしか成功しない。

これらの確率は公開されているわけではなく、ユーザーが数多く試行した結果、これだろうということで周知のものとなっただけで、運営が公開しているデータではない(と思う)。

この数値を見てもわかるように精錬確率は先細っていくし、精錬に失敗すればまた無精錬→+1からやりなおしなので、+9→+10の精錬確率を調べようと思ったときに、数多く試行するのは極めて困難になる。大量の精錬アイテム(エルニウム)および大量の防具が必要になるのだ。

「確率なんか調べなくてもいいじゃないか」と言われるかも知れない。ところが、オンラインゲームのプレイヤーにとってはこの部分が死活問題でありうるのだ。

たとえば、精錬された防具をトレードしようと思ったときにいくらで売るべきなのか?これは当然精錬の期待値ぐらいの値段であるべきだ。ところが精錬の成功確率がわからないとこの期待値自体が求められない。目分量で売るしかなくなってくる。

かつて私はこの精錬に似た仕組みのあるとあるオンラインゲームで精錬確率を大規模な統計を取って調べ上げた結果、周知の確率とは異なることを突き止めた。

そこで、誤った期待値に基づいてトレードされているアイテムを買い求め、そしてそれをいくらか精錬してそしてそのアイテムを販売することによって利ざやを儲けることに成功したことがある。この方法でゲーム内のお金をある意味、無限に儲けることが出来た。

この「いくらか精錬して」というくだりは、精錬せずに転売しようにも周知の確率から計算される期待値と一致していたのでは誰も欲しがらないので、いくらか精錬して、

周知の確率から計算される期待値 > 実際の期待値

という等式が成り立つ状態にしてから転売するという意味である。

さて、このように無限にゲーム内のお金が儲かろうが、オンラインゲームをやらない人にとっては「所詮ゲーム内のお金だろ?」ってことになると思うのだが、いまやオンラインゲームはRMT(リアルマネートレード)と密接に結びついていて、これがリアルマネーに換金できたりする。ああ、私はちなみにそのゲームでは換金していない。そのゲームに大変ハマっていたので換金するどころか、自分のリアルマネーでそのゲームのゲーム内マネーを買いたいぐらいだったのだから。

「精錬の成功確率を求めること」はゲーム攻略と切っても切れない関係にあることはここまでの話で十分理解していただけたと思う。

ではこの部分をもう少しだけ突っ込んで話そう。

確率を推定する方法については統計学の教科書でも見ていただくとして、成功確率が50%±5%だとわかるのと、5%±5%だとわかるのとでは全く意味が違う。前者は10%程度の誤差率だが、後者は100%程度の誤差率である。つまり確率が低い事象にとってはわずかな差でも大きな誤差率となるので確率がもともと低い事象の場合、誤差率を小さくしようと思うとその確率を推定するには非常に多くの試行回数が必要となる。

この試行のためにゲーム内のアイテムが大量に必要になって(精錬数が上がると成功確率が低下していくモデルになっている上に、精錬に失敗するとまた最初からやりなおしなので)、実質的に正確な推定は不可能であることが多い。

ソーシャルゲームの場合だとさらに悪いことに、試行自体に課金チケットが必要になったり、極めてレアなアイテムが大量に必要だったりする上に、確率を運営側が毎日変更しているかも知れない。そういう意味ではソーシャルゲームとは(その部分に関しては)攻略不可能なゲームに属すると私は思う。

結局のところ、運営側にしてみれば成功確率「1%」と設定しているところを「0.5%」と変更する手間は極々わずかなのに、それに対してプレイヤーがこの成功確率が変わったことをブラックボックステストによって推定する手間は計り知れない。このような運営とプレイヤー間の非対称性が確率の推定作業には内在している。

普通、作り手が何十人という人数で長い期間かけて開発したものをプレイヤーは数時間で遊び尽くしてしまうが従来型のゲームであるのだが、こと確率の推定に関しては運営がわずか数分で設定した成功確率の推定をプレイヤーは本当に長い期間をかけて調べ上げなければならない。

*1:というわけで、この「確率と場合の数」という単元に着するためにはその前準備として「数列」の単元に習熟しておくことが望ましいということになる。今回の「受験数学の理論」はこの回り道にかかる時間とコストを少しでも低減するために、巻末の「付録」で「確率」の問題を解く上で必要な数列の知識の最小限度が掲載されている。もしも、時間がない受験生はそれを参照しながら、本書を攻略したらいいのではないかと思う。