Gravity's Rainbow (Classic, 20th-Century, Penguin)

Gravity's Rainbow (Classic, 20th-Century, Penguin)

Kindle版で読了。
In the Zoneあたりから、注釈もすっとばして、「流し読み」に近い状態。
かなり前に登場してきたキャラが、後半に突然、わらわら再登場したりして、
あれ、この人どんなことした役割だったかなとかで。
錯綜。
本書の全体のストーリーをつかむというより、章立てごとに印象に残ったシーンを
断片的に、記憶にとどめながら、ただ単に「鑑賞」するような読書。
主人公も。
メインの話の筋も。
時代設定も。
あるのかないのか、よくわからないまま、情報の海の中で溺れて終わってしまいそうになります。
GRのファンの人が、章でくぎって「要約」を、自身のウェブサイトに掲載していることも
ありますけど、全体を読んでみた立場からすると、都合のいいところを
きりとっているようにしか見えない部分もある。
それだけ、小説の構造をつかむのもやりづらい。

最近、「裸足のげん」という作品を、小学生に閲覧させることの是非が教育委員会
問題になっていたけど、あの漫画作品の主題が「原爆反対」「戦争反対」だろうというのは
おそらく、そんなに異論のないところだと思う。
(私も、Wikipediaで筋書きだけ確認した。)
GRだと、扱っている題材が第2次世界大戦なのだろうということは、なんとなく「推測」される
けど、そこから、どういう「テーマ」を描いているのかとなると、おそらく読者によって違う。
英米と、ドイツが戦った戦争だから、どちらの陣営に味方するのかという論法の
張り方も一つのやり方として可能だと思うけど、
ピンチョンはそういうアプローチにも乗っていないのだろう。
どちらかというと、第2次世界大戦前後の、ヨーロッパやアメリカ、そして世界全体の
「仕組み」の解明そのことに、力点を置いているようにもみえた。
本書のどこかで、「戦争を観察するとき、死傷者の数をみているだけでは、本質は見えてこない。」
みたいな記述もあった。
そういったところに、記述の重点をおくかわりに、
おもに、高度な科学技術をもって、事業を展開する企業と、政府の活動の関係などを
作品の中の要素にしている。
スロースロップのセックスに関連する奇妙な現象についても、
そのかなりユーモラスな現象に対して、
いろいろな利害関係人が、シリアスに、科学的知見を総動員して、解明に乗り出そうとする。
登場してくるキャラクターには、たしかに狂気に満ちた感じのものもいる。
だが、そのキャラクターの言動を通じて、どういった政治思想を擁護して、どういった政治思想を
論難するのかもはっきりしない。
あえて、論難しようとしているとしたら、それは、おそらく、
個人、個人の平和で安全な生活というものが、ほとんどの人があずかり知らないところで
もろく、粉々になるかもしれない政治、経済社会のあり方なのかもしれない。
なんとなく、切れがいいように思えるけど、具体的な「敵」の設定がない限り、
こういった手法は、小説のテーマを曖昧にさせる。
しばらく、たなざらしのような状態で、放置していた読書なのでひとまずここで
一度、打ち止めにする。