BleedingEdge 32

ラカン (FOR BEGINNERSシリーズ)

ラカン (FOR BEGINNERSシリーズ)

ピンチョンの作品に、はっきりと名前が登場する精神医学の大物。
この本によると、「パラノイア」という現象について
長年研究した人なのだそうです。
彼の精神医学というものが、どういう人間観に基づいているのかの
入門的な解説になっている。
タイトルの通り、イラストも多いし、とっつきやすさでは一番では
ないでしょうか。
翻訳物。
原著者は、精神科医のようです。
読んでいて、ピンチョンの作品の一場面がぱっと思い浮かぶような知見が
所々に登場する。
どうしても、論理が飛ぶ部分が出てくるけど。
こういう本は、部分、部分ではっとするところがあればいいのではないかなと。
本の末尾には結構詳細な文献情報がある。
それにしてもこの分野の本は値段が張ります。
とある精神的な病といっていいものをもっていそうな人が、
「なぜ、そのような症状に悩んでいるのか?」
という原因を特定するときに、
「人間の成長は、とあるストーリーを前提にすると、説明ができる」
みたいなモデルを持ち出してきて、
明晰な解答があるかのようなスタイルをつくる。
登場する「仮説」には、はっとするようなものがある。
そこは、一種の文学的なセンスなのではないかと思う。
ピンチョンの作品の重力の虹のほうで、性的に開放的な主人公が
出てくるけど、そういうキャラクターが生まれる発想の根本みたいな
ものが、ありそう。
おそらく、ピンチョンは、フロイトラカンの理論もいろいろと参照したのだと
思う。
まだ、フロイト関連のテキストには触れていないですが。