塾不要 親子で挑んだ公立中高一貫校受験 (ディスカヴァー携書)作者: 鈴木亮出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン発売日: 2007/06/20メディア: 新書購入: 2人 クリック: 45回この商品を含むブログ (4件) を見る

東京に在住の二児の父が、二人を、中学受験で合格に導く。
ここまでであれば、あまり新規もてらいもありません。
しかし、合格させた学校が、「公立」の中学校だったので、この本には
商品価値があります。

日本全国で続々と設立されている、「入学試験」がある「公立中学」
の受験というのは、まだ始まったばかり。

当然、この受験に対応した業界などもまだ未成熟なわけで、
指導ノウハウも、学習参考書だってない。

しかも、この公立受験、従来の「私立中学学科試験」とはまったく違う、
知能テストのような問題が出るので、指導そのものも厄介。

そんな中で、日経新聞の金融業界担当をしているお父さんは、
記者としての経験をいかして、

  1. 自らが作文の先生になる。(新聞のコラムの要約を書き上げるトレーニング)
  2. 自らが、新聞のニュースを題材にして、公立中学の入試の予想問題集を自作する
  3. 作文などで、幅広いチャンネルをもって書き上げられるように、わが子を色々な

 特別体験教室につれて回る。

といった、涙ぐましい努力をして、合格を勝ち取ります
図らずも、「公立中学受験業界」というものが、どういうものになるのかの
青写真まで、見せてくれているようです。

筆者本人は、公立中学の受験入試問題の特殊性は、「学習塾」の指導を拒むという
立場ですが、彼が書いている本の中で、
他の県の公立中学の入試問題が、見事にわが子の東京の受験問題とフィットした
といったようなことも書かれておりました。
データの分析によるパターン認識によって、得点が挙がるところには、
必ず、「予備校業界」は成立すると思います。

このパイを取ることができるのは、一体だれなのか。
零細予備校関係者としては、興味のあるところです。

本書の最後には、ベネッセが運営している、公立中学受験の情報ポータルの
紹介などが、されていて、
インターネットによる、受験情報の収集ノウハウまでが収録されています。
さすが、日経マン。

それにしても。
中学受験屋からすると、日々おわれているのは、際限のない計算ミス、平凡ミスの
矯正の毎日。
「発想力」「独創力」「人間性」
こういった「徳目」が大事なのは、わかりますが、
「基礎体力」「絶対学力」という面に、実務上、どうしてもこだわってしまいます。
どれだけ、発想一本勝負の公立型テストで、高得点を上げても、
四則演算や、漢字の書き取りなどで、問題がたくさんある生徒が、本当に
パフォーマンスを上げることができるのかという、疑念は消えません。