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テレビ「なんでも鑑定団」の構成
絵画やつぼの値段をつけてほしかったり、
つけてもらった値段で売りたい人が登場する。
鑑定の専門家が、もってきた「お宝」の値段を「鑑定」する。
テレビ番組はここでおわる。
株式市場では、「お宝」が「会社の株式」になる。
そういう「お宝」をもってくる人は、「会社の社長」になる。
鑑定をする人は、銀行マンだったり、証券マンだったり、弁護士だったり、会計士だったりする。
視聴者は、「投資家」つまり、「会社の株式」にお金を出せる人
「お宝」に「値段」をつけて終わらないのが、株式市場の世界。
株式市場の世界では、
株式に値段をつける人
株式の値段をあげることができる人
株式を安く買って、高く売りたい人
株式に値段をつけるときの、算定根拠になる数字に、うそが入らないように
チェックする人
といった人たちが登場してくる。
この「株式市場 なんでも鑑定団」が、まとも番組として放送されるように
プロデューサーをやっているのが、
「金融庁」だったり「財務省」だったりする。
- 作者: 森生明
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2006/02
- メディア: 新書
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筆者プロフィール
森生 明 (もりお・あきら)
1959年 大阪府生まれ
京都大学 法学部
ハーバード・ロースクール を卒業日本興行銀行
米国投資銀行ゴールドマン・サックスにて
M&A(企業買収)アドバイザー業務に従事。その後米国上場メーカーのアジア事業開発担当副社長
日本企業の経営企画・IR担当を経て1999年独立
現在は西村ときわ法律事務所の経営顧問他
数社の経営顧問、M&Aアドバイスをしている。
とてもすばらしい新書に出会えたと思う。
この本を読む大前提として、
「会社とは、事業形態の選択肢のひとつである」
という商法学研究者の序文を頭にいれると、さらによいよい。
目次
はじめに
会社の値段がわかると世の中が見えてくる
→会社の値段=株式時価総額
読み方のTIPSとしては、
「会社の値段」=「会社の株式の値段」という読み替えをすると、はっきりわかる。
会社の値段は下記の式で導出される。
Cは会社の利益を指し示す
rは、会社の安定性を指し示す
数値が大きい=会社が不安定
数値が小さい=会社が安定
gは、会社の成長性、将来性
数値が大きい→会社の値段を大きくする
数値が小さい→会社の値段を小さくする
本書の中の話は、すべて
1 Cが大きくなるのか、小さくなるのか?
2 rが大きくなるのか、小さくなるのか?
3 gが大きくなるのか、小さくなるのか?
よって、本書で「会社の値段」という単語が出てきたら、まずこの公式を
思い浮かべるのが、一番大事。
3つの変数のうち、どの数値が変化する話なのかということを常に意識すること。
本書の話は、すべてこの3つの変数が上下する話です。
第1章 なぜ会社に値段をつけるのか
- 会社の役割
- 株式上場もM&Aも中身は同じ
- 反対者の言い分 その1
会社は安易な金儲けのネタではない
- 反対者の言い分 その2
バブル長者は勤勉日本人の敵
- 資本主義とは会社に値段をつけること
- 株式会社と資本主義の誕生
- 公開株式市場への発展
- 会社に値段がつくフェアな社会
ホリエモン発言の真意
ここの話は、お金で売買されると不快になるものを思い浮かべると、興味深く読めます。
私が、考えたのは「文化遺産」「皇居」「赤ん坊」「女性を花嫁にする権利」
- カネさえあればなんでも手に入る、でいいの?
日本企業によるアメリカ買いの顛末
- 日本の転換期
会社の値段が重要になる時代の到来
第2章 基本ルールとしての「米国流」
- 「米国流」がスタンダードな理由
- 投資価値算定の万国共通ルール
- 永遠に同じキャッシュを生み続ける金融商品の値段
- お金の時間価値
現在価値という発想
- 1980年代以降
株主の逆襲
第3章 企業価値の実体
- 会社の持ち主
企業価値にあたる英語はない?
第4章 「会社の値段」で見える日本の社会
ここの話もすこし、トリッキーかもしれません。
今まで、「会社の値段」の話をしているのですが。
実は、この章の話では、
「銀行が、貸出先に対して、もっている債権の値段」が変化することが
問題になっています。貸し出したお金の回収見込みが悪化する。
「貸し出し債権の値段」が下落する→銀行に損失がでる→銀行のCが減少する。→銀行の会社の値段下落貸し出したお金を、もう一回現金化する。
「貸し出し債権の値段」の下落がストップ→銀行損失増大ストップ→銀行のCの減少がストップする。→銀行の会社の値段が下げ止まる。↓
銀行のこのメリットを狙って、ハゲタカファンドと、事業再生ファンドは、資金を用意して
銀行の「債権」を安く買い叩く。
ファンドは、「債権の値段」を上昇させて、転売することで、自己のCを最大化することを狙う。銀行から、お金を借りている事業会社の視点で、「会社の値段」の公式を考える。
銀行が、借金を割り引いてくれるもしくは、チャラにしてくれる
→返済、利子の支払いが免除もしくは、減免される→Cが上昇する。→事業会社の「会社の値段」上昇銀行が、自らの会社としての値段を維持したいと思い、貸し出しをしたお金の回収に走ると、
→返済・利子の支払いが、会社の利益Cから、差し引かれていくので、事業会社の「会社の値段」は
どんどん下がっていく。
「会社の値段」の公式からみた事業再生ファンド・ハゲタカファンド
事業会社の「会社の値段」を上昇させることで、自分のもっている「債権の値段」または
株式の転売を狙っていく。
- 「会社の値段」という共通テーマ
- 全ては「金余り」からはじまった
- 高度経済成長の終わりからバブル崩壊へ
- バブル崩壊から貸し渋りと金融再編
- 銀行の機能不全からハゲタカファンドの登場へ
- ハゲタカと事業再生
- 事業再生と企業スキャンダルのつながり
- ハゲタカファンドから産業再生機構へ
- 事業再生と外人社長
- 若手企業家の登場とネットバブル
第5章 企業価値算定ー実践編
- 基本公式をどう使いこなすか
- 倍率は本質を語る
- 答えは市場から探す
- 株価、企業価値と会社の値段の関係
- 家電メーカー4社の比較
- 株価をそのまま比較しても意味はない
- 株式時価総額=会社の値段?
- 株式時価総額(=株主価値)と企業価値は違う?
- バランスシートをイメージする
- 株式時価総額とのれん価値
- 企業価値にはすべてが織り込まれる
- キャッシュフロー倍率で比べる
- EBITDAというスタンダード指標
- EV
- EBITDA倍率は経営者の通知表
- 「客観的に正しい企業価値」はあるのか
第6章 ニュースを読み解く投資家の視点
「会社の値段」を求めるには、
Cを出す
rを出す
gを出す
という三つの作業が必要。
現金同等物、つまり、現金や、有価証券を溜め込んでいる会社で、「会社の値段」を
求めるとき、
厳密には、Cではないけど、ほとんど、Cと同じものとみていいものがあるから、
Cが、公式どおりに出される値より大きくなるということ。Cプラス「Cとほとんど同じもの」
日本の株式市場では、この「足す」という作業をCにしていなかったから、
株式市場が算出する「会社の値段」=「実際の会社の値段」は、投資ファンドが、算出する「バーチャルCを足した会社の値段」より小さくなる。投資ファンドは、財務優良会社、つまりCに「バーチャルC」を足すことができる株式を割安と判断する。
自分が計算した値段が、実際の値段より高くなっているから。
- 投資ファンドばかりが儲ける世の中でいいのか?
第7章 M&Aの本質
- 健全なM&Aの姿
支配権の売買
- 100%買収があるべき姿
- 支配権価格に「相場」はあるのか?
- オーナーのわがままは構わない?
- 経営者のわがままは許されない?
- なぜM&Aが企業価値を生むのか
- M&A価格算定とDCF方式
- 支配権の値段の数値化作業
- 流動性の有無
なぜ上場廃止を選ぶのか
- 隠された負の遺産を見つけ出す
これは、どちらかというと、
r(会社の安定性)という数値を評価するための調査
何かがあると、rの値が大きくなり、「会社の値段」が下がるから、必要な作業になる
- 三タイプの敵対的M&A
良い、悪い、微妙
- ライブドアとフジテレビ
何をめぐる争いか?
- 米国の敵対的M&A合戦
ディズニーの場合
- 新たな展開
楽天とTBS
第9章 日本らしい「会社の評価」のために
- 資本主義は万能?
敵対的買収防衛策の必要性
- 会社への依存
国民性の違いか?
- 会社の金融資産は本当に株主のものか?
おわりに
投資家が形作る国と社会