受験が終わった後の数学について
ちょうど、センター試験の二日目がおわったところですね。
一浪してから、うけた2度目のセンター試験は緊張したな。
一生懸命に数学の勉強をしたのに。
それでも、数学で失敗してしまって。
もう第一志望の学校を受けることができないかもしれないって思ったっけ。
試験は、本当に水物です。
日本全国の受験生のみなさん、健闘を祈ります。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/miyagi/news/20090118-OYT8T00023.htm
センター試験 不況「背水の陣」も
大学入試センター試験は17日、県内でも東北大(仙台市)など11会場で始まり、約8950人が受験した。不況を反映してか、受験生からは切実な声が聞かれた。
「親に『実家から通える国公立大に行くように』と言われている。負担はかけたくないので、もし志望校に受からなかったら、浪人せず就職しようと思う」
東北大会場で、山形大を志望する現役男子生徒(18)はそう言い切った。
東大を目指して同じ会場で受験した男子浪人生(20)は高校卒業後、秋田の実家を出てアルバイトをしながら受験勉強を続けてきた。「自動車整備会社に勤める父が最近、残業がきつく、仕事を辞めたいと言っている。2浪しており、これ以上負担はかけられない。国立大に受かって親孝行したい」と決意を語った。
県内の志願者数は、昨年より216人少ない9687人。1日目の受験者数は、公民6028人(受験率62・2%)、国語8752人(同90・3%)、地理歴史5774人(同59・6%)、外国語8946人(同92・4%)、英語のリスニング8726人(同90・1%)だった。日程2日目の18日は、理科〈1〉〜〈3〉、数学〈1〉、〈2〉の試験が行われる。
英語のリスニング試験では、東北大で1人が開始直前に誤ってICプレーヤーからメモリーカードを抜いてしまい、試験を受けられなかった。石巻専修大の会場では1人が途中で鼻血を出し、試験を中断。2人は正規の試験が終了した後、再試験を受けた。(2009年1月18日 読売新聞)
こういう記事を目にすると、「自由に生きる」という言葉の重さを切実に感じます。
さて、数学の勉強で散々苦しめられた人もいるかと思います。
世の中には、数学者という人がいて。
その人たちは、大学に入ってからも、ずっとずっと数学の勉強をするわけです。
いったい、そういう人って、何者なのでしょうか?
そんなことを考えさせられる一冊。
- 作者: 森毅
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2006/10
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森 毅(もり つよし、1928年1月10日 - )は、日本の数学者、評論家、エッセイスト。京都大学名誉教授。専攻は、関数空間の解析の位相的研究。
来歴・人物
東京都台東区浅草出身、大阪府豊中市育ち。現在は京都府八幡市在住(八幡市の広報誌「広報やわた」より)。
数学・教育にとどまらず社会や文化に至るまで広い範囲で評論活動を行う。歌舞伎、三味線、宝塚歌劇団は在学中より熱中し、これらもエッセイの材料としている。
数学教育に関していえば、民間の教育団体である数学教育協議会の活動との関わりが挙げられる。教育論においては左翼的な傾向が強いが、同時に旧制高校的雰囲気も漂わせている。
京大時代は名物教授の一人として人気を博す。40代半ばから一般向けの数学の本で知られ、1981年刊行の『数学受験術指南』はロングセラーとなった。また浅田彰は森に数学を習い、ニューアカ・ブームの当時は盛んに森を称揚していた。「一刀斎」と号する。
「エリートは育てるもんやない、勝手に育つもんや」というのが教育に関する持論。
新聞・テレビなどのマスコミでも広く活躍。また、文学・哲学についても造詣が深く、『ちくま文学の森』『ちくま哲学の森』などの編集に加わった。
本書のあとがきから・・・・。
「数学主義」について
長い間、大学の理工系の新入生とつきあったが、彼らが一番悩むのは、高校数学と大学数学のギャップのようだ。なかには、そのギャップを大学に入ったあかしとして
たのしむのもいるが、たいていは困ることのほうが多い。それでも、大部分は1年か2年のうちにそれなりになれるからそれほど、心配はいらないと思う。ひところ、東大の理?の学生で授業についていけるのが
3割なんてのが話題になったが、ぼくの体験ではそんなにいるはずがない。高校からの数学少年は例外だが、そんなのは1割以下で、みんなだめと思ったほうがよい。わからんなりにつきあって、そのうちに慣れるのが、大学ちゅうもんや。
ただ、困ったことに、「数学はつみあげ」という信仰のゆえもあり、わからんなりにつきあうということができなくなっている。わかることを急いでいたら、研究者になんかならんほうがよい。すぐにはわからんことを考えて、そのうちになんとか
するのが、研究というものなんだから。
「料理の修業にきたつもりやのんに、包丁の研ぎ方ばっかり教えるみたいなもんかな」
「いや、それはまだよいほうで、料理道の精神訓話ばっかりしてるんちゃうか」
本書が世に出たころの時代の空気が感じられる部分もあります。
69年の兄弟では、バリケードの中で、「特別講義」をする必要が生じて、ぼく個人にとっては、このような試みが役にたった。なぜなら、闘争学生諸君はいつ教室に来なくなるかわからず、講義はいつでも「読みきり」方式にせざるをえなかった。考えてみれば、これは「日常」講義でもおなじことであったはず。「そのうちになんとかなるだろう」式のフヤケタ講義に、教師も学生も埋没していたわけで、価値は毎時間のうちにのみ期待されるべきだった。
最後にアジテーションをひとつ。ぼくはひそかに、この本を読んだ大学生諸君にたいして、フヤケタ講義の日常性への氾濫を期待している。1970年春 一刀斎 森 毅
自分が学生だったころを思い出すとき。
大学の先生というのは、職務の性格として、とても地味なものなのだろうということです。
きっと、森先生も、日々の研究生活と、たまにある講義の準備くらいを、タンタンとこなしていたのだと思います。
ファンイマンの講義録を読んでいても、そうした「生活」の影が、チラリと見えることがあります。
授業、講義そのものが、成立しなくなる日がくるなんて、想像もしていなかったのだと思います。
そんな静かな日常が、いきなり、音を立てて崩れた時間が本当にあった。
おおまかには、全共闘系と民青系と当局系と、3つのグループがあって、夜になると集まっては情勢を論じ合っている。僕は野次馬ラジカルでみんな興味があるので、全部に出て、かちあうと一晩かけもちしたりして、「京大の一匹コウモリ」と粋がっていた。それでも、ひとなみに、団交でつるしあげにあって、
「森さん、あんたはすこしでも戦う姿勢がなくて評論家してるだけやないか」
まったくそのとおり、異議ナシ、全面降伏バンザイ、確認シマシタ。
それから3日ほどして、そのセクトの親分にキャンパスで出会ったら、
「先生、このところ情勢混沌、どないみてはります?」
「なにいうとんの、こないだ、あんたとこのお若い衆に評論家いうてつるされたとこやで」
「先生かて、長いこと京大で飯くうてるんでしょ。団交てそんなもんですがな。こっちかて、本気で先生に戦うてもらおうなんて思いますかいな、そんなん、マンガやないですか」
たしかに、「これからは戦います」なんて決意表明もしなかったなあ。
一匹コウモリの術というのは、いろんなグループに行くが、そのことでグループのダイナミズムを知り、全体の配置を自分の頭のなかに構成すること、そこで得た情報で、他のグループが知ると有利になることは、
絶対に口にせぬこと。そのグループの特質のかぎりで、全体の状況のなかで、可能なことは助言するが、たぶん一番意味のあるのは、そのグループの長短をはかる批評家的スタンス。
でもこれは、どこかのグループの御用評論家になるより疲れることで、結局は入院してしまった。
この本のもとになる原稿は、そのときのベッドで最終回を書いた記憶がある。つまりは、この本を書いた時代の背景。ちなみにそのころは乱れていたので、入院しているのに、病休届けを出さなかったっけ。
僕は、森先生と、学生のこのやり取りの間に、「共通感覚」というものを感じ取る。
お互い「教授」「学生」という仮面をかぶって、大学の中にいるけれど、その仮面や役割をはずしたとき、
お互いに、人間だよなという「共通感覚」「共通理解」を感じる。
「対立」や「闘争」というものが、終わりなく、とことんまでいくかどうかは、この感覚を当事者が持つかどうかだろうと思う。
目次
はじめに
1章 不等号と論理
不等号を使って
あるカンタンな「逆命題」
もっと複雑な「逆命題」
であるための条件2章 極限と連続
論法とは
数列の極限
関数の連続性3章 実数の基本性質
実数について
順序完備とコンパクト
完備
連結4章 微分(Differential)
5章 指数関数と三角関数(円関数)
6章 微分を使って
7章 近似と極限
8章 差和分と微積分
差和分と微積分
級数の和
部分積分と部分和分
微分方程式と差分方程式9章 2階微分
2階微分
2階微分と極値問題
束縛条件のある場合10章 微分作用素
微分作用素の変数変換
ラプラス作用素の極形式
ルジャンドル関数とベッセル関数
直交関係積分の二つのイメージ
密度を持った積分と点での積分
平均としての積分
重心12章 収束の一様性
2変数関数と関数列の収束
ノルムと収束
単純収束と一様収束
収束の一様性と連続関数
2変数関数の連続性13章 微積分と連続関数
連続関数の積分
積分は連続、微分は閉フラフ
重積分と累次積分
コンパクトでない場合14章 面積と体積
集合の上での積分
面積と偏す右辺間
面積の符号と重複度
極座標の場合15章 関数をめぐって
16章 曲線と曲面
線要素と面要素
線積分と面積分
微分式の積分
積分領域の変化17章 ベクトル解析
微分式の微分
ストークスの定理
ポアンカレの定理
ヘルムホルツの定理18章 解析性
19章 複素変数関数
20章 フーリエ級数
21章 フーリエ変換と超関数
フーリエ級数とフーリエ積分
たたみこみ(Convolution)
軟化子(Mollifier)22章 偏微分方程式をめぐって
熱・波・ポテンシャル
波の伝播
熱の拡散新装版にあたって
文庫版あとがき