先日、この本の筆者の講演会にいく機会があった。
<現役高校生対象 大学受験指導>【研伸館】予備校
池谷裕二のホームページ
こちらの予備校が、小学校に就学する前の生徒さんに早期教育
実施する講座を開設する運びとなり、そのために関西の教育熱心な
保護者の人にアピールをしていくイベントを企画。
「関西最大の親不孝通り」がある西宮北口にて、この本の筆者が
ゲストスピーカーとして登壇することになる。
本人が東京大学に研究室をもっている人だから、おそらく日帰り出張の
時間に合わせたと思われ、講演のスタートの時間は午前10時半。
平日のこの時間帯って結構バタバタしているのではなかろうかと
思っていましたが、教育熱心な子育て真っ最中のお母さんというのは
こちらが想像しているより、たくさんいるものなのだなと思った。
予備校の8階のビルの大きい講義室を借り切っての講演だったけど、
満員になっていた。しかも、当日会場までいって、知ったのだが
この講演会は、いきなりフラリといって参加するものではなくて、
予備校に申し込みはがきを送って、入場チケットを取得していないと
原則、聴講できないというものだった。
西宮北口の駅の目に付く柱に全部ポスターが貼ってあったとはいえ、
こんなに人が来るのかと驚いた。

教育関係者の講演会というのは、別にこの先生に限ったものでもなく、
色々なところで、色々な人が行っていると思う。
ただ、僕は、自分が仕事をしている最中にこの本について、保護者の
人から直接紹介をうけたことがあった。
というより、この本を読むきっかけは、そもそもその保護者から
寄贈をうけたことがきっかけだった。正直、シビアな受験で
問題になることで、ダイレクトに「記憶力」というものが成否を
決するのかというと、個人的には疑問だと思っている。
もちろん、そういう要素はあるけれども、普段、授業をして、生徒さんの問題点と向き合っているときは、あまりそういうことが前面に
出ることはない。
たとえば、「英単語を覚えよう」「古文の単語を覚えよう」
とか、こういったことを課題として出すことはあってもこちらが
記憶の方法に関するメソッドを特別に持ち出すといったことを
しなくても、すいすい暗記する生徒さんは暗記する。
もちろん、では、これができる生徒さんと、できない生徒さんがいるのはなぜなんだとか、そういう話にもなるわけですが。

話を講演会の当日に戻そうと思う。
そういうわけで、講演の会場に到着したのっけから困り果てることになる。
気が早く早朝から会場に待機しているお母さんはいそいそと入場チケットを取り出して、
予備校のスタッフに渡して、せきとりをはじめる。こちらは、手ぶら。
そうこうしているうちに、エレベータから池谷先生登場。
スタッフに取り囲まれて、講演の準備室に入る。
本の筆者を生で見るという経験はあまりしていない。個人的にはこれからどんどんしてみたい経験の
一つではある。この人にあってみたいという筆者はいくらでもいる。
なんてこったいと困り果てて、スタッフに泣きつく。
人のよさそうなおじさんだったので助かった。
「そうですね。きっと開演時間の5分前くらいには空き席がありそうかどうかはっきりすると思います。
ですから、あと20分ほど経過したら、またこちらに来てくれませんか?」
といってもらう。
助かった。願ったりかなったり。聞くことができたらなんでもいいです。
予備校の近くに、県立のコンサートホールがあり、そこの野外喫茶のテーブルで時間をすごす。
今日は、中高生の芸術鑑賞の時間があるらしく、制服を着た生徒さんの行列がわらわらとコンサートホールを
通り過ぎていった。はたして、立ち見でもいいから、中身をのぞけるのかしらと、いそいそと会場に
もどる。
そうしたら、たくさんの人でごったがえしているドサクサの中で、会場にいれてもらえる。
無事に席を取ることもできた。

2010年10月29日 午前10時半。
時間きっかりに、講演開始。

先生は時間きっかりに開始した「講義」を、ちょっと予定時間を超過させて終わらせることになる。
西宮北口に貼り付けられたポスターには丸い大きなメガネに、派手目なネクタイという
ちょっとキテレツっぽいカッコウで写真に写っていたので、「この人はこんな路線だったのか?」
と思いきや、この日、「生」で見かけた先生は、そんなメガネをつけることもなく、ごくごく
普通のスーツで登場されていた。
その内容をどうやってブログで紹介したらいいのかというのは、かなりブロガーの技量の
問題だなと思う。
脳科学の研究者として、自分自身、脳の機能について世界に先駆けて解明することで学会に貢献していく
というミッションが前提にある人だ。
この先生は、そのミッションを実現するために普段は研究室で動物実験をしている時間が長いと冒頭で
おっしゃる。
そう、それがこの先生の「生活」なんだと思う。
主に、動物実験の相手は「ねずみ」。こんにちわ「ミッキーマウス」。

冒頭にて、脳科学という分野でどんな実験をしてどんなことを「発見」するのかという紹介を
される。
ここで、写真を載せることはできないので残念だけど、食事のときに日常的に使用する
「お箸」を、歯で、ヨコに加えるという格好で「漫画」を読むと、(つまり笑っているわけではないけど、
「笑っている」表情に近い表情になる。)
唇で「お箸」をぶら下げるように加えて、「漫画」を読むときよりも、「面白い」と感じることが
多いということを、証明する論文がイントロで登場。

この先生は、「科学者」だから、どんな「実験」を紹介してくれるのかということを
書いていったほうがいいような気がしてきた。

「つり橋効果」 つり橋の上という身体的な危険を感じる場所で男女にいてもらう。
危険な場所では、女性の心拍数が上がる。男性が彼女にラブレターを渡すと、彼女の脳は、
「身の危険」を感じることからあがった心拍数を「ときめき」と勘違いする。

ねずみにいうことを聞かせたいときに、ふたつの方法があると。
猫をちらつかせて「脅す」。
チーズをちらつかせて「誘う」。
「成功」する「確率」としては、「チーズ」のほうがいいらしい。
これは、かなり確信をもっていえると、先生はいう。

この講演は受験生を抱える保護者向けに開催されているので
「学習」と「記憶」の関連についての実験結果も色々と紹介される。

集中学習(一夜漬け)と「分散学習」(コツコツ型)
ではどちらが、テストでいい点数を取得できるのか?
これも、実際に単語のテストを素材にして、何人もの人にモニターになってやってもらう。
1日で、2コマ学習。
2日で、1コマずつ学習。
1日で1コマ学習。

「復習」にまつわる実験。
正解しているところも、まちがっているところも、復習して、すべての問題につき繰返しテストする。

まちがっているところだけ、復習して、まちがったところだけをテストして、すべての問題につき正解が
出せるようにさせる。

時間を置いて、再試験をやった場合にどちらが、いい結果を出しているのか。

「入力」重視の復習 「出力」重視の復習

ノートや参考書をながめるだけの復習と、問題集をどんどん解いていく復習ではどちらが定着率が
いいのかとか。

講演会にきている人にあわせたタームになおして聴衆の人たちに飽きがこないようにあれやこれやと
随所に工夫を凝らして、講演は進んでいく。
これが、無料で聞けるなら、正解だったんじゃないかなと思う。
ここで、書いた実験でどういう結果が出たのかということは、残念ながら、あまり細かいことは
覚えていない。おっと僕も「記憶力」を鍛えなおさないといけない。
でも、ここで紹介された実験や、そこからわかる「知見」というのは、もうこの先生が執筆している
本の中にたくさん、紹介されているのだと思う。
だから、もしも興味があるのなら、池谷先生の書物を紐解けばいいというわけ。

講演会の内容になるものをたどるとそれは大学の科学研究にいきつく。
その研究内容が、丸裸の状態で、大学の外で提示されてもそれは、たくさんの人が興味をひくものには
ならない。ダイヤの原石だって、加工というプロセスを通過しなかったら、あんなに光り輝くことはない。
会場にいる保護者の人が、「脳科学」というジャンルの話に、声を上げて笑いながら、最後まで
聴くということにも、「仕掛け」が必要なのは間違いないと思う。
池谷先生が、講演を聴く人に対するサービス精神を存分にもっているということがよくわかる充実した
時間になった。

そうこういうことがうまい人は、海を隔てて、世界をにぎわしているように思えます。
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数の子という食べ物がある。
もうそろそろ2010年も終わろうとしているけど、おせち料理とかに登場します。
wikipedia:数の子

語源は「かどの子」の訛りである。近世までニシンを「かど(カドイワシ)」と呼んでいたことの名残である。メスの腹から取り出した卵の塊を天日干し又は塩漬けしたものを食用とする。ニシンの卵一粒一粒は細かいが、無数の卵が相互に結着して全体としては長さ10cm、幅2cm前後の細長い塊となっている。価格が高く、黄金色をしていることから黄色いダイヤの別名がある。
ニシンが昆布に卵を産みつけたものを子持昆布と呼び、珍味としてそのまま食べたり、寿司ダネとして利用される。

正直、この食品をおいしいと思ったことはあまりないのだけれど、まあ重宝されるものではある。
ニシンという魚は別に日本以外でも捕獲される。
オランダという国の海岸でもこのお魚はどうやら食用につられていたみたい。しかしオランダ人には
この「数の子」をありがたがって食べるという発想が、食習慣に根付かなかった。
オランダにいる駐在日本人たちは、そこに目をつける。
オランダ人の漁師の人たちは、「こんなものをそんなにありがたがるって、変わっているね。」
と思いながらも、バケツに「数の子」の卵をいっぱいに詰め込んで、日本では考えられない値段で
売ってくれたのだそうだ。これは、そこにすんでいる人から聞いた話だから本当なんだろうと思う。

そうなんだよね。もっている本人ですら、その「価値」に気がつかない「宝」というものが、どこかに
きっとあるんだって。いつも思うようにしている。
これは、どうも「数の子」や「脳科学」に限った話ではないのだと思う。
Value Creation と Value Captureのことにもつながってくると思うけど。

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教育関係者としては、これからも「記憶」というトピックに関しては、キャッチしていきたいと
思う。