パロアルトにいた古文教師

古文の読解 (ちくま学芸文庫)

古文の読解 (ちくま学芸文庫)

読了。
大各受験の実践的な指導に使えるかどうかという観点から読んでみたけど。
十分、今でも現役に耐えるのではないかと思いました。
W大学と、T大学の最近の入試問題を念頭に置いて、読解してみても
そういう結論がでたのですけど。
この先生の他の文献にも興味がわいてきました。
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya1049.html

株屋さんたちの世界「22が5、24が6」というのがある。「22が4、24が8」などというそろばんのはじき方では、とても株はやれないのだそうだ。
(中略)
21世紀へ生き延びるためには、諸君の一人一人が図太くなってほしい。「知らないから、正解は書けない。」などと、弱音をはいてはいけない。正解が出なければ、70パーセントの正解をつかめばよい。70パーセントが無理なら50パーセントでもOKだ。なぜなら、50パーセントは45パーセントの上だからである。もし47パーセントの所にボーダーラインがあれば、50パーセントで合格する。合格さえすれば、100パーセントの正解を書いたのと同じだ。つまり50イコール100である。

古文研究法

古文研究法

上記、「古文の読解」がとても興味深い本だったのでそのままの勢いで
「古文研究法」も通読。
まだ年齢の幼い天皇に、シンプルな「コマ」のプレゼントをして、
帝の心をつかんでしまう藤原の行成とかいう人のお話。

平安時代の結婚のあり方の説明で取り上げられていた物語文。
亭主が、正妻のほかに好きになった女性ができる。
そしてその浮気の相手の女性を、なんと正妻がいる屋敷に迎え入れようとする。
亭主は、正妻を家から出て行ってもらうために苦心惨憺する。

更級日記だったかな。
宮中にて、働いていた経験のある同僚3人が、その「現役時代」を振り返って
和歌を三者三様に読み上げるというもの。
和歌の内容にそって、その三者が、どのような「宮中おつとめ体験」を語っているかを
読解させるといった「例題」もある。

つれづれ草か、本居宣長の原文を使った「歌論」というジャンルの説明も
あったような。

どうして、この本に用意されている150ほどの例題のうち、これだけを取り上げたか
というと、これらが、とある国立大学の古文の入試問題として登場しているから。
あきらかに、一時期の古文の入学試験を作成する立場の人は
この本を参考にしていたのではないかなと。
読んでいて、思った。
そして、別に「受験対策本」として、有効かどうかはさておくとして、
やはり、「学習参考書」というジャンルをこえて、
日本の古典文学に触れてみたい人への最良のガイドブックとしての地位は
これからもゆらがないのかもしれないと。
ひょっとしたら、この「古文研究法」を超える、または有益な古文対策の本という
ものは、すでに何冊か出ているのかもしれない。
たとえば、古文の単語をどうやって覚えるのかとか。
なにを、どれくらいの詳しさで覚えたらいいのかとか。
そんなことにもページが割かれていますが、
私は、古文の単語の勉強に関しては本書はすすめられないような気がします。
してもいいかもしれませんが、好みにはなりません。

今時の高校生で、この本を最初から最後まで読む人というのがどんな人なのか
想像もつかないですけど。
いたら、拍手。
この手の本を、そんなに早い時期に読了してしまうメンタリティが果たして、
幸運なのかどうかは、よくわかりませんが。

語学的理解(古文単語 助動詞 助詞 修辞法)

精神的理解(古文常識といわれている色々な雑学)

歴史的理解(文学史の知識)
で出来上がっています。
おそらく、いまの予備校の現役の古文の先生もこの流れで
授業をやっているのではないかなと思います。
いまは、この3段階の理解を、それぞれ別々の本で
学習するようになっているのではないかな。
はっきりと覚えていないけど、たしか増進会の古文の参考書は
4冊くらいのシリーズになっていた。
入門から、入学試験の実践に耐えられるレベルまでそれくらいの
テキストをこなすのがいまの高校生のスタンダードなら、おそらく
この小西先生の本は、それを1冊で済ませられるように作ったのだと
思う。
初版が1955年だけど、それを考えると、いまでも実用に耐えるのでは
ないかなと。
先ほども書いたけど。例題の数は150.
しかもこれがすべて、小西先生のオリジナル問題らしい。
これは、かなりすごいことなのではないかと思う。


あとがきより

旺文社大学受験ラジオ講座テキスト
現代文 慶応大学講師 塩田良平
古文 教育大助教授 小西甚一
漢文 東大教授 加藤常賢