西原理恵子:エロ本のカット描きから始まった仕事。プライド捨てて「売り込みしかない」 | BizCOLLEGE <日経BPnet>

感覚的なるものを、第三者に見せるという仕事をしている人の内面というものが、
するどく、分析されているように思います。

最初は、絵にすごく自信がないので、絵の周囲に文字をいっぱい書いたんです。それが、ライターさんのエロ文体にツッコミをいれるというものだった。そうしたら、そのライターさんがわざわざ電話をかけてきてくれて、「面白かったよ」って。「文章をちゃんと読んで、ツッコミ入れてくれるイラストなんて初めてだよ」と。編集さんも、面白いと言ってくれて、生まれて初めての仕事で、生まれて初めて人から褒められました。すごくうれしかったですね。それまで生きてきて、褒められたことなんて一回もなかったですから。 それに、隙間があると怖いんですよ。今の私のマンガも全部そうでしょ。

絵の隙間にいろんなもの詰めて文字を書き込んじゃう。担当は病気の原稿と言い「すごく面白いけど、一行ずつ文字を減らしてください」とか言われて。私、松花堂弁当とか、京都みたいにぜいたくに空間に間を置いて……、みたいことが怖くてできない。それで何万円とか、平気で原稿料をいただくのが、できないんですよ。それこそ、「おばちゃんの弁当、安くて隅っこまでオカズが詰まってますよ」っていうぐらいじゃないと、心配になるんです。