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マインドセットは変えられるか?(下) || INVENIO LEADERSHIP INSIGHT

「やればできる!」の研究―能力を開花させるマインドセットの力
- 作者: キャロル S.ドゥエック,今西康子
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2008/10/27
- メディア: 単行本
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上記を実証した上でヘスリン教授は、何らかの介入(Intervention)によりFMマネジャーのマインドセットを変えられないかと思案します。そして以下のような巧妙な介入手段を編み出します。
A)科学的証明(Scientific Testimony):脳科学の最先端研究のビデオなどを見せて、人間の脳がいかに新しい知識やスキルを吸収し成長し続ける器官であるかを科学的に理解させる。
B)反態度的アイデア創出(Counter-Attitudinal Idea Generation):マネジャーという立場で考えた時に、部下が成長することが大切である理由を少なくとも3つ強制的に発想させる。注:ここで言う「態度」とは心理学の専門用語で、ある対象に対する個人の一貫した心の構えを指す。従って「反態度的」とは、“その人が持つ心の構えに反する”という意味。FMマネジャーの基本的な「態度」は、「部下が成長することなんて期待できないし、さして重要でもない」であるため、部下が成長することが大切である理由をFMマネジャーに強制的に考えさせることは「反態度的」ということになる。
C)反態度的振り返り(Counter-Attitudinal Reflection):過去の記憶を遡らせ、自分が知っている誰かがいつどのようにして変わり成長を遂げたのかを強制的に思い出させる。
D)反態度的唱道(Counter-Attitudinal Advocacy):仮想の部下(名前はPat)を想定させ、Patが努力した結果大いに成長したという前提で、Patへの賞賛と激励のメールを強制的に書かせる。
E)認知的不協和(Cognitive Dissonance):「とても彼(彼女)では出来ないだろう」と思っていたことが出来るようになった人物を3人程思い出させ、なぜそのようなことが可能になったのか、出来ないだろうと勝手に決めつけてしまっていたことがどのような悪い結果を引き起こしえたかを想像させる。
これらのトレーニングメニューは全て、「部下には成長する余地が十分にあるのだ」と自己説得(Self-Persuation)することを目的としたものであると言えます。
さて気になるトレーニングの成果ですが、ヘスリン博士の実験によると、上記トレーニングを受けたFMマネジャーは、トレーニング終了後6週間経った時点でもトレーニングを受けなかったFMマネジャーに比べて、
?マインドセットがGM側に近寄った状態を維持した
?部下に対して、質・量ともにより良質・多量のアドバイスを与え続けた
?部下のパフォーマンス向上に関して、より感度の高い認知能力を保持したという結果が得られました。トレーニングから1ヶ月半を経過した時点でも、FMマネジャーに、GMマネジャーとほぼ同程度の公正な人事考課と良質なコーチングを行わせることに成功したというのは、正に特筆すべき成果と言えるのではないでしょうか。