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GRは4部構成。
そのPart1を読み終える。
果たして、最後までたどり着くことは可能か?
Gravity's Rainbow (Classic, 20th-Century, Penguin)
- 作者: Thomas Pynchon
- 出版社/メーカー: Penguin Press
- 発売日: 2012/06/13
- メディア: Kindle版
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PCとiphoneの両方。
今回は、しっかり読み込んでいくために、単語調べをしています。
Kindleにあらかじめ付属している辞書のソフトウェアを使うという
ことも引き続きしていますが、それでも意味の探索が出来なかったときには
WikipediaやGoogle検索も動員するという形です。
もともとKindleについていて、ペーストしたテキストでGoogle検索に
かけるということを、今回は多用。
Onlineで公開されている辞書で検索した結果も、ランキングされて
登場するのでとても便利。
最初は、KindleのAmericanOxfordDictionaryで調査していて、
それでも間に合わない場合は、「英辞朗」アプリを開いて、検索する。
それでも、よくわからない場合はGoogle検索で
オンライン辞書や「画像検索」を使って、意味の類推をしていく。
このようなステップをとりました。
特に、「抽象的な概念」をさすのか、「具体的なモノ」をさすのかという
ところが、AODである程度、察しがついたら、「画像」検索で
直感的に意味を取るように努めることにしました。
使っている調べ物ツールは
KindleのAOD
英辞朗
Google検索
YouTube(音楽と映画)
この4つ。
ピンチョン作品が、今回は3作目ということでいろいろと中途でノウハウを
蓄積させていますが、Google検索をもっと使っておけばよかったとすこし
後悔。
たとえば、もうすでに発売停止になっているタバコのブランドとか。
英語で説明されてもイメージができない木製の飛行機プラモデルとか、
小説の風景にでてくる植物の姿とか。
こういったものは画像検索するに限ると。
しかも、「画像」検索をかけた場合、ヒットする画像ファイルは大抵数十枚に
及んでいるので、複数の画像をみることで意味を手堅く類推することができる。
家の柱をさすらしき、単語がAODで登場したとき、「画像」検索をかけると家の設計図の画像ファイルがみつかり、その設計図のなかにJoistという
部品をさすところを発見できたりする。
ピンチョンのように、ありったけの語彙を動員して物語りをつくる場合、
読者にも、それなりのハードさが求められる。
KindleのなかのAODは、コピーとペーストができない。
しかし、Google検索で発見する語彙の意味内容は、コピーして、
Kindleの(Add NOTE)のテキストボックスにペーストが可能。
こうすることで、Kindleに入っているGRのテキストに、オリジナルな
語注をどんどん追加させることが可能になる。
人にもよるとおもうけど、場合によっては反復して読みたい人も
いるでしょうと。
今回は私がKindleにいれた単語に関する情報などは、Kindleのなかで
どうやって共有するのだろうとおもう。
翻訳という作業を複数人でやるときに、大事になってくるのは訳語の
統一らしい。だとしたら、KindleのAddNoteに入力した内容を
複数のKindleAccountで共有できることはとても大事。
そういうこともこれからの課題にしたいと思う。
A Gravity's Rainbow Companion: Sources And Contexts for Pynchon's Novel
- 作者: Steven C. Weisenburger
- 出版社/メーカー: Univ of Georgia Pr
- 発売日: 2006/11
- メディア: ペーパーバック
- クリック: 1回
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作品中に引用される詩歌のオリジナルになっている作品は何かとか。
登場人物のモデルになっている「現実の人」は誰かとか。
どういった箇所で、どういう韻を踏んでいるのかとか。
特定の時代にしか売られていない商品の説明だとか。
こういうものが、ピンチョン作品では、断り書きがない状態で
そこらに散乱しているという形をとる。
そうなると、読者としてはやはり、GRのところどころにちらばる
上記のような「なぞかけ」について、親切にガイドしてくれる本が
必要になってくる。
AgainstTheDayとMason&Dixonではこの役割をオンラインの掲示板である
Wikiが果たしていた。
GravitiRainbowも、上記2作品と同様に、Wikiも整備されているのですが、
ほかとは、違って、GRの「注釈」に特化した「書籍」をWeisenburgerという
人がつくってしまった。
掲示板では、無数の人々の善意に頼っていることで、逆に、注釈の
正確性が、おそらくノーチェックで放置されていたのだと想像されますが、
Weisenburgerは、骨を折って、色々な学術分野の人たちと意見を交換
させながら、Companionをまとめてしまった。
GRを研究した論文や、GRの時代背景を知るのに、有益な文献のリスト
なども完備させた形で、「売り物」にばけた。
Pictures Showing What Happens on Each Page of Thomas Pynchon's Novel Gravity's Rainbow
- 作者: Zak Smith,Steve Erickson
- 出版社/メーカー: Tin House Books
- 発売日: 2006/11/30
- メディア: ペーパーバック
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読んで、浮かんできた情景を、なんと、小説1ページにつき、1枚の絵に
したものを、束にした集めたものなどが、売られております。
こっちは、正直、すこし期待外れだったのではないかなと。
このイラストが助けになって、読解が進んだというのはすこし
厳しいかも。
報復兵器V2―世界初の弾道ミサイル開発物語 (光人社NF文庫)
- 作者: 野木恵一
- 出版社/メーカー: 光人社
- 発売日: 1999/12
- メディア: 文庫
- クリック: 12回
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始まっています。
そして、このV2Rocket開発の事実上のトップであったとされる
フォン・ブラウンという人が書いたとされる「引用文」が第一部の
「序章」になっています。
そういうわけで、このロケットが、GR全体をたとえ話とした場合、
その重要な小道具となるでしょうということで、このロケットに関する
資料を探していたらみつかった文献です。
ここから先は、フィクションではなく、本書に基づいた「史実」。
まず、ことわっておく必要があるのは、この本には「参考文献一覧」
がないということ。
これは、かなり致命的なのではないかと個人的には思うのですが、
日本語の文献で似たようなものがない(だから筆者はここに狙いをつけたのかもしれません。)ので、目を通しました。
若干安心したのは、本の中で、どのような文献を参照したのかが、部分的に
開示されていること。
私が、読んだ限りでは、この本に書かれていることは、
ドイツ語文献か、その翻訳。
GRの小説に出てくるロケットのモデルは、ドイツで開発されたという経緯が
詳しく書かれています。
第一次世界大戦に敗れたドイツ軍が、和平条約で、あらゆる再軍備の
ルートを封じられたと。だからといって手をこまねいて、ドイツ軍の
弱体化が進行するのを看過できなかった人たちが、和平条約で
取り上げられていなかったロケットを、有力な軍事兵器にして、再軍備を
実現可能にしようとする。民間で巻き起こっていたロケット開発ブームに
資源を投入していくという形をとった。最初は、いまでいえばSFマニアみたいな
人の走りが趣味みたいな形で、自作した機体を空に飛ばして、遊んだり、見せ物に
したりするという流れだったらしい。その当時にもロケットの「自称専門家」
みたいな人がでてきて、自らのロケット工学の知見をテキストにまとめたりする。
そのテキストを、みた宇宙少年が、ロケット開発を夢見る科学者になっていくというような今でもありそうな流れたあったと。本書ではその当時に書かれた
テキストなども登場する。
そんな開発だったところに、軍事兵器としての可能性が認められると
ドイツ軍が、その開発にお金を出すようになる。
開発の実務を担当するのは、あまり政治に関心がないバリバリの科学者だけど、
税金を使って、軍備増強の一貫としてやる以上は、「開発責任者」は
あくまで、「軍人サイド」で、仕事を進める。
そのようなスタンスで、技術者としても貢献していったのがドルンベルガー
という人だったらしい。そしてこの人が、戦後だったかどうか定かでは
ないけど、当時、自分が当事者として関わったこのロケットの開発の顛末を
回想録として書いたと。私がこの本を見るかぎり、この本はその回想録を
もとに、組み立てたのではないかと。
GRに登場するフォンブラウンという人の回想録なんかも、最後に出てくる。
いや、回想録というよりは、本人の「宇宙開発構想」。
DasMarsProjectだったかな。
306ページ
「ドイツは戦争に敗れた。」とフォンブラウンは何の感慨もなく宣言した。
「しかし我々は、宇宙に初めて到達したのが我々のチームであったことを忘れてはならない。我々は人工衛星を、月や惑星への旅行を忘れたことはなかった。我々は、ロケットの平和な未来を信じてきた故に、多くの辛苦をなめさせられた。今や我々には、この技術をつたえるという資格がある。戦勝国はどこも、我々の知識をほしがるだろう。そこで問題は、我々の将来をどこの国へ託すかということだ。」
全員が彼らの未来を、アメリカに賭ける道を選んだ。ペーネミュンデの技術陣が可能な限りまとまって、アメリカ軍に投稿する方針が決まった。
(3689文字)
このフォンブラウンという人物は、日本のガンダムなど、多くのヒット作品でも
大きな存在らしい。
SFの世界を引っ張ってきた当事者の一人といってもいいのかもしれない。
そして、それだけの注目をうけるだけの実績がある人だったんだなと思う。
本書によれば、彼も若いころは、単なるロケット好きの科学少年
だったと。ロケットや宇宙が趣味という高校物理の先生なんか共同作業を
していたらしい。
彼が、民間人としてロケットの開発をしていたのが、どうして軍事兵器としての
ロケットの開発に参画したのかという経緯も興味深かった。
軍の責任者の人に
「ロケット開発をノウハウを、軍の研究所でしっかりためこんで、博士論文を
書きなさい。そうしたら、君の将来は開かれる。」
みたいな。
宇宙がすき。ロケットが好き。
その目的を達成するための手段としての仕事選びで、雇い主が民間会社なのか、
後にナチスになるドイツ軍なのかは、関係がない。
自分の目的やテーマを達成するのに、貢献する主体とだけ取引をすればいい。
世界大戦の前後で、フォンブラウンのこの姿勢は微動だにしない。
こういう立場で、世界をわたっていける人間と、住んでいる所に
いきなりロケットを打ち込まれたて右往左往するしかない人間とに
分断されているのは、何もいまに始まったことではないということ。
フォンブラウンのような「賢明さ」を評価していくべきだという立場と、
わけのわからないままに、ロケットの犠牲者になる人間に同情しろという立場に、
おそらく戦争というものへの見方は分かれる。
人間は強くなって行けなければいけないという世界観は、フォンブラウン的な
ものへの共感に傾く。
他者の痛みへの想像力が、なにより大事だという世界観は、フォンブラウン的な
ものへのフォーカスよりも、「平和教育」に傾く。
第一部を読んだ限りでは、GRはこの二つの流れの真ん中で、絶妙な
スタンスを取りながら、ストーリーを進行させているように思えた。
戦争のロジスティックを支えた多くの優秀な科学者も登場させる一方、
大学卒業資格をもたないで、はじめてイギリスで首相にまでなったマクドナルドや
、ドイツ共産党を結成し、激烈な社会活動をしながらも非業な最後を遂げる
ローザ・ルクセンブルクが出てくる。
このバランスを今後、GRはどのように展開させていくのか、楽しみに
したいと思う。(4650文字)